生活をしていくうえで少なからず出てしまうゴミ。減らそうと心がけていても、現代の暮らしの中では一定の不要物は出てしまうものです。例えば引っ越しをすれば、荷解き後に相当量のダンボールや梱包材はゴミとなり、いつ廃棄できるのかと気を揉むこともあるでしょう。日本でも、県をまたいだり、あるいは隣町ですら、管轄の自治体が違えば分別方法や回収日に違いがあるものです。ましてや国が違えばどうでしょうか。
今回は、移住や旅行で滞在したその日から気になる、ドイツでのゴミの分別方法を紹介します。
ドイツのゴミ分別方法
まず、ゴミの分別方法は以下のとおりです。
1. 一般ゴミ(Restmüll)
家庭で発生する一般ゴミで、再利用できないもの。
2. 有機物ゴミ(Biomüll)
食べ残しや生ゴミ、庭で伐採した草木や落ち葉など。最終的には堆肥となるためいわゆるコンポストのような役割です。自治体によっては一般ゴミと区別しないところもあります。
3. リサイクル(Wertstoffe)
プラスチック、アルミ製の容器、ビニル、発泡スチロールなど。牛乳パックや食品トレイはここに含まれます。ドイツでは、容器や梱包材のリサイクルは商品生産者の義務となっています。矢印がふたつ組み合わさって円を形作っているDer Grüne Punkt(グリューネ・プンクト)マーク(写真1)がついているものは、そのライセンス料の中に製造元がリサイクル業者に委託して容器を処理するコストを支払っていることを意味するもので、リサイクルゴミの目印となります。
4. 紙・ダンボール(Papier・Pappe)
古紙、雑誌、新聞紙など。過度の汚れのあるもの、コーティングされたものは除きます。
5. ビン(Glas)
ワイン、ジャム、酢やドレッシングなど調味料、オイル漬けや酢漬けにされた食材などの空きビンが該当します。白(透明)、緑、茶の3色に分けて回収されます。
6. 小型の家電(Elektrokleingeräte)
携帯電話やCDプレイヤー、ラジオ、PCキーボードなどの小型の電化製品。テレビや電子レンジは含まれません。
7. 衣類や靴など(Kleidercontainer)
衣服、靴・帽子などの服飾雑貨品、カーテン、シーツなどの布製品。破れて着られないものや下着類、端切れ布は不可です。
8.缶・ペットボトル・ビール瓶(Einwegpfand-Symbol)
回収し、リユース(同容器を再使用)またはリサイクル(分解して再生産)される容器類。ビール缶やペットボトルに「Einweg−Pfand」の文字とその下のマーク(写真2)がついているものは、商品を購入する際に消費者は容器代込みの価格を支払っており、あとから返金される仕組みです。のちほど詳述します。
9. 使用済み電球や電池(Leuchtmittel und Batterien)
電球は回収されますが、水銀が使用されている蛍光ランプは含まれません。
10. 粗大ごみ(Sperrmüll)
ベッドや本棚、家具などの大きな不要物。
11.その他危険物や小型以外の家電品
ペンキなどの塗料やオイル類、スプレー缶、その他化学品物質、小型以外の電化製品。
以上、自治体によって多少の違いはありますが、約10ほどに分けられます。生ゴミが一般の家庭ゴミと分けられている点、「可燃ゴミか/不燃ゴミか」といった仕分けではなく、回収して「再利用できるか/できないか」という視点で分類されている点が特徴と言えるでしょう。
日本ではおそらくほとんどの自治体において、紙、缶、ビン、ペットボトルは「資源ゴミ」として、それぞれ分類こそすれ同一の指定場所に出せばよいのに対し、ドイツでは回収場所が異なります。正しい分類方法の次は、それぞれをどこに持っていくかについて解説します。
ゴミを出す場所と留意点
ドイツのゴミ回収は有料で、コンテナの大きさによって料金が異なります。個人宅やレストランなどが回収料金を支払っているコンテナが、敷地内を外れて通りに置かれていることもまれにありますが、料金を負担していない限り捨てることはできません。
一方、ビン、古紙、古着などの再利用を目的とした回収コンテナは、公園や広場など街の景観のなかにあり、居住地に関係なくどこのコンテナでも捨てることができます。駅や公園、横断歩道前などにも、吸い殻入れや一般ゴミのゴミ箱が置かれています。
主な回収場所は以下の通りで、廃棄する際には定められた時間帯に従います。
A)住居前の指定場所
捨てられるもの:1.一般ゴミ 2.有機物ゴミ 3.リサイクル 4.紙・ダンボール
家庭から出る上記のゴミは、集合住宅の場合は家の近くの指定場所か、個人宅の場合は個別に依頼したコンテナに出します。上の写真のように、建物前のスペースに回収コンテナが置かれていることがほとんどです。左から、紙ゴミは青、リサイクルは黄、家庭ゴミは黒、有機物ゴミは緑の蓋のコンテナへと捨てます。州や自治体が違っても、各ゴミの回収コンテナの色分けはドイツ国内で似通っていることが多く、判別しやすい仕組みです。
集合住宅の場合、ゴミの回収料金は管理費分として家賃に含まれています。そのため、基本的に回収場所またはコンテナの扉には鍵がかかっており、その場所で捨てることが可能な住民しか開けることはできません。
廃棄可能な時間帯は特に指定がないことが多いですが、週に一度の収集日前になると紙ゴミコンテナが既に満杯で入らないということもあります。近くに公園など回収場所があればそこに持ち込んだり、収集された後に出すなど配慮が必要です。
B)公園や通り沿い
捨てられるもの:4.紙・ダンボール 5.ビン 6.小型の家電 7.衣類や靴など
以上のものは、公園や通り脇など公共の場に回収コンテナが置かれています。ビン回収は白・透明(WEISS)・緑(GRÜN)・茶(BRAUN)の3パターンで、あまりありませんがこれら以外の着色されたビンは緑ビンのコンテナに入れます。また、ビンの蓋は一般ゴミ、割れた場合も一般ゴミとなり、回収コンテナには入れません。陶器や磁器も不可の注意書きがされています。
衣類は必ず綺麗に洗った状態で、ひとつずつではなく袋などにまとめて出します。
詳細の時間帯については自治体ごとに異なりますが、ある地域の例を挙げると、ビンは平日の7時から20時まで、小型家電は月曜日~土曜日の7時から19時まで投函可能となっています。
C)スーパーマーケット
捨てられるもの:8.缶・ペットボトル・ビール瓶
先述のように、Einweg-Pfandマークが付いているビールやペットボトル製品は、購入価格に容器代が上乗せされています。飲み終わった空容器を上の写真のようなスーパーに設置されている回収コーナーに持っていき、バーコードを読み込ませると回収してくれる仕組みで、素材によって一本あたり€0.08~€0.25の返金が受けられます。返金額とバーコードが記載されたレシートが出てくるので、それはそのままレジで支払いの際に使うことができます。つい日本の感覚で、捨てる前に良かれとペットボトルのパッケージを外してしまうと、バーコードを読んでくれなくなるので要注意。また、ペットボトルは蓋も合わせて出します。
缶と違い、ビール瓶には当該マークがついていないことがほとんどですが、スーパーの売場で写真6のようにプライスタグに「MEHRWEG」とあるものはリユース対象の意味。「+Pfand 0.08」などと返金額が併記されています。購入レシートにも商品単価とデポジットは分けて記載されます。一方、ペットボトル製品でもEinweg-Pfand対象外があり、そちらにはパッケージに「Ohne-Pfand」あるいは「Pfandfrei」などと表記があります。購入代金に容器のデポジットが含まれていないこれらは、リサイクルゴミとなります。
D)ドラッグストア
捨てられるもの:3.リサイクル 4.紙・ダンボール 9.使用済み電球や電池
電球や電池は危険物扱いとなる地域もありますが、一部の自治体では一定規模以上の売り場面積を持つ小売店舗での回収が始まっています。ドイツでは、レジ精算をしながら購入品を自分で買い物袋へと入れていくスタイルで、別途に荷詰めをするスペースは基本ありません。レジ通過後のスペースには、上の写真のような回収ボックスが設けられていることがありますので、その場で不要な梱包紙やビニルパッケージなどのリサイクルゴミを出すことも可能です。
E)個別に申し込み、または持ち込み
捨てられるもの:10.粗大ゴミ 11.その他危険物や小型以外の家電品
一般コンテナでは廃棄できない大型の不用品、家電、危険物などは、個別で自治体に回収を申し込むか、集積所に持ち込むことになります。粗大ごみの回収は有料で、自治体のサイトからオンラインで申し込むことができます。参考までに、ある州では8㎥分で€35、これには住居から外に持ち出すまでのサービスは含まれません。
有料の回収を依頼せず、Recyclinghöfe(リサイクリングホーフ)と呼ばれる集積所に自ら持ち込むことも可能です。また、日本では廃棄されたもののまだ使用可能な家具・家電を安価に購入できるリサイクルセンターがありますが、ドイツでも同様のサービスが提供されており、無料で持ち帰ることができます。
不用品リユースの意識
ゴミとして回収コンテナに出す前に、「まだ必要な人がいるかもしれない」と次の人へつなげる取り組みを、ドイツでは町のあちこちで見ることができます。たとえば、広場に古本をシェアする本棚がある、集合住宅の前で「zu verschenken(お譲りします)」と書かれた箱に使われなくなった食器や衣類が入っている、椅子やソファなどの大物家具でも外に置かれていると持っていく人がいる、など。コロナ禍により、昨年から規模の縮小や一度に入場できる人数の制限はありますが、Flohmarkt(フリーマーケット)も頻繁に開催されています。ゴミの回収量を減らし、モノを循環させるための取り組みと言えます。
ドイツ環境庁の発表によると、2020年の調査において、ドイツではリサイクルに回されずにゴミとして捨てられた廃棄量が過去35年間で約半分になったそうです(参考:Residual waste in Germany has nearly halved in 35 years)。しかし、まだリユースやリサイクルに回せるものが一般ゴミに混じって捨てられていたり、2010年以降、梱包や包装材の使用量は国内で増加しているとのこと(参考:Further increase in packaging consumption in 2018 in Germany)。EUの環境対策を牽引しているドイツですが、まずはゴミの分別を徹底するなど、暮らしの身近なところから環境保全に配慮していく姿勢が求められています。