豊かな自然、高い経済水準に教育水準、英語の通じやすさ、そしてワークライフバランスや医療の手厚さなどが呼び水となり、北欧諸国は世界でも有数の「移住先人気国」として注目を集めています。

日本人への人気も例外ではなく、北欧の主要国は留学先、転職先として密かなブームとなっています。日本とワーキングホリデービザ協定も結んでいるため、31歳未満の転職希望者には最初の渡航ハードルが低いことも理由の一つです。

今回の記事では、北欧移住の魅力と職探しの難易度についてご紹介いたします。

※北欧という定義にはいくつかの区分けが存在していますが、本稿では「Nordic Countries」の括りとなるアイスランド、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークの5ヵ国を前提とします。

この記事のターゲット
・北欧の魅力を知りたい人
・北欧への就職難易度を知りたい人

なぜ北欧が日本人移住者に人気なのか?

世界の国・地域のなかでも特に日本人が良いイメージを持つことの多い「北欧」。まずは様々な観点から、北欧の魅力に触れていきます。

※本稿のランキングはOECD Better Life Indexを参考にしています

環境の良さ

OECD内順位国名
1位スウェーデン
2位フィンランド
3位ノルウェー
4位アイスランド
8位デンマーク
20位日本
(出典:OECD Better Life Index environment

水質汚染、空気の清浄度、など人間の健康にとってポジティブな環境が備わっているかどうかは、移住先の選定にあたって重要な指標の一つになります。北欧諸国はOECDトップクラスの環境状態を保持しており、世界中の移民を魅了する理由として数えられています。

ワークライフバランスの高さ

OECD内順位国名
2位デンマーク
3位ノルウェー
6位スウェーデン
16位フィンランド
32位アイスランド
37位日本
(出典:OECD Better Life Index work-life-balance

世界でも屈指の「ワークライフバランス」先進国で知られる北欧諸国、既にアイスランドでは週休3日制が導入されました。高い労働生産性を誇る北欧諸国では、自身の得意とする産業に焦点を絞ることで不要な業務を削減し、世界の中でも高い競争力を維持しています。

給与水準の高さ(手取り)

OECD内順位国名
4位アイスランド
10位スウェーデン
13位ノルウェー
18位フィンランド
21位日本
23位デンマーク
(出典:OECD Better Life Index income

福祉大国である北欧諸国では額面のうち税金の占める割合が高く、可処分所得が他国(アメリカやオーストラリアなど)に比べやや低い傾向にありますが、それでもOECDの中で上位の高所得水準を保っています。

高い英語話者率

世界順位国名
2位ノルウェー
4位スウェーデン
7位デンマーク
14位フィンランド
92位日本
(出典:EPI)

北欧諸国は高い英語力で知られています。現地公用語のスキルがハードルとなってコミュニケーションに不自由をする場面は、限定的と言えるでしょう。スペインやイタリア、東欧諸国のような英語の習得率の低い国に比べると、大きなアドバンテージと言えます。

ワーホリの申請しやすさ

 年齢制限期間年間発給上限数
スウェーデン18歳以上30歳以下1年無し
ノルウェー18歳以上30歳以下1年無し
デンマーク18歳以上30歳以下1年無し
フィンランド18歳以上30歳以下1年200
アイスランド18歳以上26歳以下1年30

北欧諸国はそれぞれ日本とワーホリビザの協定国でもあり、条件を満たせばワーホリで最大1年の滞在が可能です。上述の通り、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの3か国は縛りも緩く、ワーホリ初心者でも比較的低いハードルで渡航することができます。

一方で、年間発給上限が200と定められているフィンランド、そして30と定められているうえ年齢制限が26歳とタイトなアイスランドは、その他のワーホリ協定国と比較しても難易度が高いと言えるでしょう。

こうしたワーホリを活用して滞在、そのまま現地に職を見つければ長期的な滞在が可能となります。

北欧への移住が難しいわけ

こうした多くの魅力をかかえる北欧ですが、実際に北欧に定住している日本人の数はあまり多くありません。上記の5か国への日本人の滞在者は全て合わせても1万人程度と、イギリスの6万人、ドイツの4万人と比較すると圧倒的に少ない数と言わざるを得ないでしょう。

 在留邦人数
イギリス64,970人
ドイツ42,079人
スウェーデン4,590人
フィンランド2,257人
デンマーク1,996人
ノルウェー1,508人
アイスランド152人

移住のための大きなハードルとなるのが「現地での職探し」です。例えばアメリカやイギリス、ドイツのように経済規模が大きい国では現地の日系企業が日本人の就職先の受け皿として機能しますが、北欧のように人口と経済規模の小さい国ではこうした日系企業の数が圧倒的に少なく、いきなり難易度の高い現地企業への就職という限られた選択肢しかほぼ残されていないわけです。

また、北欧への移住者の中にはその過酷な自然条件(冬の寒さ、日照時間の少なさ)などから長期滞在を断念し、他の欧州諸国へ移動するケースも散見されます。旅行やワーホリで訪問するのと、実際に住んで生活するのとでは勝手が違うという好例でしょう。

その意味で、北欧と似た経済水準、ワークワイフバランスの高さを持つドイツは、北欧での就職に代えてヨーロッパでの現実的な移住を模索する人々にとっての代替案として機能することが多いと言えます。

項目ドイツのランキング
環境の良さ13位(OECD内)
ワークライフバランス8位(OECD内)
給与水準の高さ(手取り)11位(OECD内)
英語力10位(世界)
ワーホリの発給上限無し

特に、その経済的な日本との繋がりの深さから、日本語を話せる人材、または日本の文化を知悉した人材の採用に力を入れている多国籍企業の数が多く、一定レベルの英語力や必要に応じた職歴とスキルがあれば現地採用のポジションが得られる可能性が高くなると言えるでしょう。

北欧と似た環境ながら、職探しのハードルが比較的低いと言えるドイツでの生活にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか?