※この記事は2024年8月に加筆されました(この記事に出てくる値は1€=160円で計算されています)
ドイツ転職を志す者にとって一つ悩みどころになるのが、転職後に得られる実際の平均年収です。
平均年収 | 年収中央値 | |
ドイツ | 53.118EUR(849万円) | 43.842EUR(708万円) |
日本 | 25.875EUR(414万円) | 22.500EUR(360万円) |
日本の約2倍という平均年収に魅了されドイツ転職を目指す日本人の数も少なくありませんが、果たしてここに記載された通りの平均年収をドイツで日本人が得ることは可能なのでしょうか?
・日本人がドイツに転職する際、どのくらいの平均年収が期待できるのか
・どういった要素が給与に影響を与えてくるのか
ドイツ平均年収事情
ドイツの平均年収は一見して高いようにも思えますが、実際には働く都市、会社の規模、部下の有無、学歴、勤続年数などによって年収額は大きく変化し、例えば大卒初任給であれば35,000~45,000€の間が平均年収相場です。
ドイツの大卒初任給の平均年収:
従業員数 | 学部卒 | 修士卒 |
従業員10人以下 | 32,300EUR | 37,900EUR |
従業員10~99人 | 36,000EUR | 37,600EUR |
従業員100~999人 | 39,700EUR | 41,300EUR |
従業員1000~5000人 | 40,700EUR | 42,500EUR |
従業員5000人以下 | 42,800EUR | 44,600EUR |
また、日本の場合年収を考えるうえで年齢が一つのファクターになってきますが、ドイツの場合年齢ではなく「その業界における勤続年数」がキーファクターになってきます。
例えば、ドイツの大手リクルート会社Step Stone社の公表しているデータによると、ドイツでは専門での職歴が2年以下の場合の年収は35,000EUR~50,000EUR程度で、この職歴が伸びていくとともに年収が増えていく統計です。
後述するように、日本からドイツへの転職の場合、過去の実績の引継ぎが難しいことから、新卒採用としてポジションを得るようなケースが多々あり、その場合こうした「職歴2年以下」の給与テーブルがもとになることがあります。
ドイツと日本とで大分賃金格差があるんだね、特に新卒以降10年目まで
日本は年功序列型だからね、年を追うごとに格差は縮まっていくわ。また、後述するように所得税、交通費や住宅補助等を考慮すると、手元に残るお金は日独でグラフほど劇的に違いはないわ
外国人(日本人)のドイツにおける就職は新卒扱い?
さて、日本人などドイツ国外の人間がドイツで就職(転職)をした場合、ドイツ人並みの高い給与を享受することができるのでしょうか?
一般的に、以下の2つの側面から、実際に期待通りの不可分所得を得ることことは難しいとされています。
1つ目の問題が、職歴の互換性です。
例えば、日本で10年間法人営業の経験がある場合、ドイツに転職してもそこでそっくりそのまま10年分の法人営業の職歴が認められるかというと、必ずしもそうではありません。
日本や海外で培った経験は、その国の文化やコンテキストでのみパフォーマンスを発揮できないようなケースも少なくなく、それらがドイツでの職歴10年分としてそのまま扱われるかどうかは転職後のポジションや会社特性などによって大きく異なってきます。
そのため、統計上ではドイツのほうが日本よりも平均年収が高く見えますが、ドイツで転職したからといって、その給与水準をドイツ人以外の文化で育った者がそのまま享受できるかというと、また別の問題になってくるというわけです。
日本からドイツの会社に転職する場合、日本での経験がゼロになり、また「新卒(Berufseinsteiger)」として給与テーブルが一からスタートすることも稀ではありません。
それどころか、英語やドイツ語でのビジネス経験がないと、むしろパフォーマンスが見込めないとして、平均給与以下、新卒の給与テーブルからのスタートになることもあります。
日本では誰もが知る大学を卒業し、誰もが知る大手企業で10年近いキャリアを積んできたのだけれど、ドイツの人事部はそんなことはあまり関係ない、といった様子でした。ドイツ企業では日本での実績は評価されにくく、色々応募した挙句給料3割減でようやく仕事を得ることができました。
ちなみに、当社調べによると日本からドイツに転職した日本人の平均年齢は30.7歳。これを上回り、日本で役職手当や家族手当等がついているようだと、ドイツに来てからむしろ給料水準が下がってしまうかもしれないわね
2つ目の問題が、手取りと額面の差と福利厚生です。
例えば、額面で月収40万円のケースを想定すると、日本の場合手取りで30万円くらいですが、ドイツの場合額面のうち約30~35%程度が天引きされ、手取りは26~27万円程度に落ち着きます。
また、会社によりけりですが、日本の大企業ではごく当たり前にある交通費、住宅補助、転勤費などの福利厚生が、ドイツでは特例を除き享受できる場面が少なく、日本からドイツに転職したからといって、月々の口座残高が増えるかというと、必ずしもそうでいうわけではありません。
そのため、ドイツの平均年収は確かに魅力的に見えたとしても、実際にドイツに転職し、むしろ可処分所得が減ったという声は後を絶ちません。
額面でみると確かにドイツの給料は日本よりも高いのだけれど、税金を差し引かれたり交通費補助が無かったりと、手元に残るお金は日本で働いていた時とあまり変わらなかったかも。。
額面にばかり目が行きがちだけど、ドイツの所得税は世界でもかなり高い部類に属することを注意しなくてはいけません。代わりに、国立の学費や医療費が無料など、メリットの面もあるのだけれどね。手取りと額面の関係に関しては過去記事の「【ドイツの給与支給額のからくり】額面と手取りはどれくらい違う?」の記事を参照してね
ドイツ転職で日本人が得られる平均年収相場は?
上述のように、ドイツでは会社の規模や今までの勤続歴によって期待できる年収額は大きく異なってきます。
また、職歴の互換性や技能(語学力等)によっても異なり、一概に「日本での年収がこれくらいだから、ドイツに転職するとこれくらい」と試算することが困難です。
一般的に、日本からドイツに移住し、職業の互換性がない(一般的に、営業やマーケティングなど文系の分野では理系に比べ互換性が少ない)分野で新しく職歴を開始しようとすると、ドイツの大卒初任給と同水準程度の35,000~45,000€あたりが一つの相場になります。
逆に、職業の互換性が高ければ(具体的には、プログラマー、リサーチャー、エンジニア、デザイナー、等)、過去のパフォーマンスをドイツでの再現可能と見なされ、給与テーブルを引き継げることがあります。
例えば、下のテーブルはドイツの職種ごとの平均年収値ですが、うち「互換性」を持つ職種であれば、ドイツ人であろうと日本人であろうと給料の乖離が低いと言えます。
セグメント | 平均年収 | 互換性 |
金融(保険・証券) | 74.000EUR | |
法律 | 69.000EUR | |
コンサルティング | 64.000EUR | |
エンジニア | 63.000EUR | 〇 |
IT | 61.000EUR | 〇 |
マーケティング | 60.000EUR | |
営業 | 59.000EUR | |
人事 | 58.000EUR | |
研究員 | 56.000EUR | 〇 |
物流 | 50.000EUR | |
医療・福祉 | 47.000EUR |
日本でのキャリアが引き継げれば給与はプラス、引き継げないとまた一から出直しって、まるでゲームみたい
一度リセットになってしまうかどうかは職種によるわね。ただし、上述のような互換性有の職種でも「ドイツ語」「英語」がパーフェクトに話せないとドイツ企業が興味を示すことは極めて少ないわ。なので、上述の表のような給料水準を日本人が得られるかと言われると、あまり現実的ではないわね
加えて、以下のポイントはドイツ企業での年収に強く影響を与える要素です。
ドイツの年収に影響を与えるファクター:
- 企業規模(500人を境に大きく変化)
- 過去の同一業界における勤続年数
- 職業のポジション(部下の有無)
- 業界(証券、銀行、コンサル等は高給与)
- 大学卒or大学院卒or博士課程
- 就業する都市(旧西ドイツは一般的に高給与)
こうした要因を加味して、日本での給与水準を維持しつつドイツで転職するには、様々な就活リサーチと、企業との面談時の給与交渉が必要になってきます。
また、ドイツ企業以外の選択肢で言えば、在独の日系企業の中には日本での職歴を高く評価する企業が少なくなく、勤務形態など、日本での生活スタイルを崩さずにドイツで転職するには一つの理想例です。
転職先の特性、ポジションなど、様々な要素を鑑みながら適正給与の交渉をするのは容易ではないため、当社のようなリクルート会社を介してドイツでの就活をおこなうのも一つの手です。
なるほど、ドイツ在住の日系企業であれば日本での職歴をそのまま引き継ぐことができるのか
ドイツに展開する日系企業にとっては、「日本のビジネスノウハウを知っている」というのはむしろ大きなアドバンテージだからね。ちなみに、当社調べでは日本からドイツ日系企業への転職者の平均年収は+121.1%となっているわ。ドイツ日系企業への応募はこちらから!