このカテゴリでは、Career Managementのサービスを利用して、ドイツでの就職活動に成功した方々の体験談をピックアップし、紹介していきます。
今回は、日本でドメスティックな法人営業に従事し、その後ドイツに渡って全く分野の異なる物流業界に就職された木村さん(当時28歳、仮名)のストーリーです。
日本でのキャリアから国際的な舞台を夢見て
木村さんは、日本の4年制大学を卒業後、東京に本社のある金融機関で数年、法人企業を中心に営業をおこなっていました。
彼が就職活動をおこなったのはリーマンショック後の就活氷河期の時代でしたが、金融機関独特の大量採用方式の中の一員として採用されると、多くの同期の中でも優秀な成績をあげ、とんとん拍子でキャリアの階段を上がっていきます。
さて、銀行、証券、保険のような金融の特徴として、国内競合との激しい営業合戦が挙げられます。
新卒から数年、こうした日本の伝統的な営業スタイルに身を任せ、同期と切磋琢磨して営業成績を伸ばしていた木村さんでしたが、国内競合とのパイの取り合いにエネルギーを割く中で、日本が国際マーケットの中でのパワーを失っていく実情を、次第に歯がゆく思うようになってきました。
元々木村さんは、大学時代、留学経験も有り、将来的には世界を舞台に日本の産業を大きく盛り上げていきたい、というキャリアへの展望があったのですが、日本の金融部門の伝統的な営業スタイルの中では、まだまだ他社競合との国内のパイの取り合いという構図が根差し、中々そのチャンスを得られずにいました。
法人営業としての仕事は非常に木村さんにとってやりがいがあり、また会社の中での評価も良かったため、数年はその仕事に打ち込んでいた木村さんでしたが、20代後半に差し掛かり、徐々に将来のキャリアについて再検討し始めます。
ヨーロッパやアメリカの駐在員の話などを聞いたり、かつてのサークルの先輩の海外での活躍の話を聞き、昔の熱意を思い起こした木村さんは、会社を退職し、ドイツで日系企業とヨーロッパ市場の橋渡しをするという夢を実現するため、単身、渡独することに決意しました。
ドイツの経済大学院でロジスティクスを学ぶ
木村さんは、渡独前にすでに将来のキャリアを決めており、渡独はとっさの思い付きではなく、方向性に関してもある程度具体的なものが定まっていました。
- 日系企業の、ヨーロッパにおける販路拡大を将来行いたい
- あるいはその逆に、ヨーロッパの知られぬサービスや商品を日本に導入したい
- その中で、日欧双方のビジネス文化を知る人材として活躍したい
そのために、木村さんは、欧州の中でも日系企業とのつながりの深いドイツで、体系的に欧州流のビジネスを学ぶため、ドイツの経済系の大学院の門を叩きます。
ドイツの大学院のシステムは、あまり日本人には知られていませんが、業務に直結するような実践的な専門大学から、理論的なことを学ぶ大学コース、他にも、1年で通えるようなものや、英語のみで卒業できるMBAコースなど選択肢が豊富で、木村さんはその中で、今までの金融の専攻を離れ、ロジスティクス系に特化した知識を身に着けることにしました。ロジスティックを専攻に選んだ理由としては、日独の仕事の綱わたしとして人気の高い専門性で、かつ以下の通り将来的な年収が期待できる点が挙げられます。

木村さんにとって幸運だったのは、大学院で、専門の勉強に加え、ドイツ語と英語、双方を身に着けるだけの時間がたっぷりとあったことです。
そのため、日本での職種とは全く異なる職種を勉強しなおした木村さんでしたが、大学院卒業を控えた2年生の後半時には、ドイツ語、英語ともに堪能になり、すでにドイツ企業からも仕事のオファーを貰っている状況でした。
また、ドイツの大学院を卒業した、というのも木村さんのビザ取得にとって追い風でした。ドイツの移民局は、ドイツで大学・大学院を卒業した者に対して比較的ビザの受け入れをしやすく、また永住ビザ取得のプロセスも短縮されます。
“ドイツの大学・大学院を卒業した場合、このドイツ滞在の目的が兼行されるため、学業ビザから就労ビザへの切り替えが必要となりますが、基本的にドイツのビザ取得においてドイツの大学・大学院を卒業した場合、移民局も比較的ビザ申請を受け入れてくれやすい傾向にあります。”
引用元:ドイツの大学を卒業後、学生ビザを労働ビザに更改するためのプロセス
ちょうどそんな時期に木村さんは、ドイツ企業だけではなく日系企業の現地採用も比較したいという気持ちから、Career Managementにコンタクトしました。
ドイツで就職活動と日系企業への応募
ドイツの就職活動のシステムは、一括新卒採用方式を軸とする日本とは異なり、会社ごとに採用の時期が異なり、また、大学・大学院生の卒業の時期も一定でないため、スケジュールは割と幅を持たせることが可能です。
木村さんが就職活動を始めたのは、卒業を3~4か月後に控えた時期で、この頃からドイツ企業、日系企業の双方への応募・面接の準備などを始めていました。
日系企業は、ヨーロッパ経済の中心でもあるドイツに多く、欧州本社機能を設置しており、それゆえ営業の出先機関としてだけではなく、欧州市場全体のロジスティクスやマーケティング、研究機関や複雑な人事システムを備えた会社も少なくありません。
“ドイツに進出している日系企業の魅力の一つに、「欧州の統括機能を持つ」点が挙げられます。欧州の経済機能の総本山としてみなされているドイツゆえ、日系企業がその他欧州地域などに製品を販売する場合、ドイツを軸として、そこから他国へのビジネス展開を行っているケースが少なくありません(かつてはイギリスとドイツの二大拠点でしたが、イギリスのEU脱退に伴い、イギリスのハブとしての機能的魅力が衰えつつあります)”
引用元:ドイツの日系企業に日本人が現地採用されるための条件とメリットは?
こうした、いわば欧州本社としての機能を持つ日系企業は、現地に500人以上の規模の従業員を抱え、現地採用組の日本人の仕事の役割も、日欧のビジネスの折衝や、サプライチェーンの管理など、多様でやりがいのある仕事が多く、木村さんはその中で、自分の大学院時代の専門を生かしたロジスティクス系の職種に、Career Managementを通じて応募することにします。
ドイツ企業の場合、Specialistとしての育成に重点を置くため、過去の専門との関連性によって給与が決まってしまうことが多々あります。例えば木村さんの場合、日本での法人営業としての経験はロジスティクス系の職種ではあまり評価されず、新卒採用としての給与テーブルで計算されることが多くありました。
一方で、Generalistの育成を軸とした日系企業の人事評価の場合、こういった過去の営業経験等、他分野での活躍も評価の対象となり、結果として日本にいたときと遜色ないような給与の評価を得ることができました。
実際に日系企業の一次面接では、こうした本人の専門と、過去の経験、現地での給料など、会社と木村さんのニーズがマッチし、木村さんは二次面接に呼ばれることとなります。ちなみに、ドイツの日系企業に就職する日本人のうちの約10%程度がこうした物流・ロジスティック部門ポジションとなり、過去営業職だった人などもこうしたポジションにつくことがあります。
待遇、職務内容以外に、木村さんにとって実際に気がかりだったのは、現地日系企業での将来のキャリアです。木村さんが噂で聞いたところでは、現地採用組と、日本の本社からの駐在組で、できる仕事の裁量に大きな差が有り、会社によっては、現地採用組はいつまでたっても大きな仕事をさせてもらえないとあり、その点に関して勤務開始前にはっきりとさせておく必要がありました。
そうした不安な点についても、木村さんはCareer Managementの担当者と密に相談し、ここ最近の日系企業の現地採用の戦略が変わりつつある点、より高い質の業務が求められる点などを明確にします。
こうして不安点をクリアした木村さんは、二次面接に臨み、晴れて日系企業の欧州本社でのロジスティクス業務担当者としての職を勝ち取りました。
以下は、木村さんによる、同じ職種に応募したドイツA社と、日系企業B社の比較テーブルです。
ドイツ企業A社 | 日系企業B社(内定先) | |
応募職種 | ロジスティクス | ロジスティクス |
給与 | 過去の職種と異なるため、大卒初任給テーブル | 過去の職種と異なっても、経験が加味される |
交通費 | 出ない | 出る |
昇給のペース | 早い(スキルと業績に応じる) | 中程度 |
ドイツ語要件 | ビジネスレベル | 中級~ビジネスレベル |
英語要件 | ビジネスレベル | 中級~ビジネスレベル |
現在、ドイツでは日系企業の市場拡大にともない、よりクオリティの高い、複雑な業務に対応できる日本語人材の需要が高まっています。そんな中、木村さんのような全く異なる職種へのジョブチェンジは、ある種時代の流れに沿った、成功例として挙げられるでしょう。