昨今のボーダーレス化に伴い、大学・大学院の選択肢は日本に留まらず、海外の有名な大学に就学する日本人の数も増えています。海外留学をおこなう日本人の数は年間10 万人前後と言われています(平成29年、文部科学省)。
以前まで、留学と言えばアメリカ、イギリス、オーストラリアなど英語圏に限定されていましたが、最近ではチェコやクロアチアなど欧州諸国も大学に英語のプログラムを用意し、日本人留学生の入学のハードルも低く設定されるようになってきました。
今回は、こうしたヨーロッパの大学を卒業した日本人にとって、なぜドイツが人気の就職先なのか、その魅力に迫っていきたいと思います。
海外留学後に現地就職という新しい道
一昔前まで、海外留学はあくまで「就学の場」であって、卒業後は日本に帰って語学や身に着けた異文化折衝能力を商社などで役立てるような用途で用いられていました。
時代の変化とともに、この傾向にも変化が現れつつあります。実際に最近のトレンドとしては、海外の大学や大学院を卒業後もその場にとどまり、現地での就職を志す人の割合が増えています。
もっとも日本人にとって、現地の大学や大学院を卒業したからと言って、現地での就職は決して楽な道ではありません。
特に、上述のようにチェコやクロアチアなど中欧諸国が大学で英語のプログラムを設けているため日本人の留学先としても人気ですが、労働市場が小さいことと日本語需要が少ないため、卒業後も現地に留まれる学生の数は極めて限定的です。
一説には、海外留学後も現地に留まれる日本人の割合は全体の10%以下と言われており、海外就職の難しさを示しています。
さてそれでは、こうした「ヨーロッパの大学を卒業した日本人」には全く需要がないのか、日本人は留学後は大人しく日本に帰って就活したほうがよいのかというと、そういうわけでもありません。
ヨーロッパの大学を卒業した日本人学生は、英語に精通している他、仕事を通してだけでは身に着けることの難しい「現地文化」を身でもって理解しているため、例えば、欧州に拠点を構える日系企業等にとっては喉から手が出るほど欲しい人材ではあるのです。
しかし、こうした在欧の日系企業が大っぴらに募集を行うケースは少なく、結果、応募者側と採用側とのすれ違いが度々生じています。
それでは、ヨーロッパの大学を卒業した学生が宝の持ち腐れにならずに、良い企業と巡り合うには、どのようなアプローチをすべきなのでしょうか?
ハンガリーの大学院を卒業しましたが、現地語が話せない自分には現地での就職は簡単ではありませんでした・・また、求人はどこも月収手取り6~7万円程度で、駐在員の日本人が寿司屋で豪遊するのを傍目に羨ましがる情けない恰好です
ドイツ以東になると給与水準はがくっと下がるので、手取りだと10万円いかない国が多いかもね。日本人だからと言って給料を優遇してくれるわけではないし、暖衣飽食に慣れ切った日本人には苦しい生活かも
そもそもどんな日系企業が現地採用者を欲しがる?
そもそも、現地採用の日本人を雇える体力・ノウハウのある会社には、いくつか条件があります。
- 長年の海外支店運営のノウハウがあり、駐在員の数を減らそうとする会社
- 日欧の折衝交渉機会の多い会社
- 現地採用のための人事ノウハウが身についた会社
こうした条件が具体的な例で、設立後間もない海外支店であったりすると駐在員のマネジメントに頼る傾向が強く、あるいは極端に本社との折衝が少ないケースですとそもそも現地採用の日本人を必要としません。
そのため、日系企業の進出先としてまだ日の浅い、中欧・東欧諸国では、日本人の現地人材を雇えるほどの機能が備わっていないケースが多いのです。
こうした条件を満たし、「ヨーロッパの文化に詳しい」日本人人材を最も欲しがる企業は、すでに1980年代からローカルの支店を運営し、駐在員の金銭的負担を減らし、ローカライズに移行したいドイツやイギリスの日系企業などに集中しています。
欧州屈指の日本人労働市場、ドイツってどんな国?
さて、上述のような経緯から、元々ドイツの日系企業には「現地の文化に精通した」日本人を欲しがる土壌がありました。
現地というのは、単にドイツだけではなく、欧州各国の文化も含まれます。いったいなぜでしょうか?
それは、ドイツの日系企業の持つ機能と密接に関係していますが、歴史的に欧州経済の中心であるドイツには、長らく日系企業が「欧州拠点」を置く傾向があったためです。
今まで、ドイツはイギリスと並んで二大欧州中心地だったのですが、イギリスのEU離脱に伴い、ドイツの欧州拠点としての期待がますます高まっている状況です。以下の図は、欧州各国に展開する日系企業の数と、その国の現地給与水準です。
赤字の国は、日系企業の数は多いけど日本人が必要とされない国?
その通り、基本的に日本人人材が欲されるのは西欧諸国の習熟した市場を持つ国で、東欧の法人は「現地工場」であることが多いわ。現地語がパーフェクトに話せるなら需要があるかもしれないけど・・図を見ても分かる通り、ドイツ・イギリス・フランスの3国のプレゼンスが抜きんでているわね
欧州拠点の機能とは、欧州各国の支店をマネジメントする、いわば日本に次ぐ「準本社」のような立ち回りで、ドイツのみならず、フランス、ロシア、ポーランド、トルコなどと折衝するチャンスが十二分にあるのです。
そのため、今まではドイツ現地就職と言えばドイツ語必須のようなイメージでしたが、それだけでなく、以下のような人材も強く求められるような傾向が高まってきました。
- ヨーロッパの大学、大学院を卒業した学生
- 英語、日本語に加え、欧州言語(スペイン語、イタリア語など)を話せる人材
- ヨーロッパで就職した経験がある人材
- 長く生活し、ヨーロッパの現地文化に精通した人材
- ヨーロッパに住んだことはないが、日本等からヨーロッパと長くビジネスをしてきた人材
チェコの大学を卒業しました。チェコ語は話せませんが、現地の文化に精通しているということもあり、ドイツに拠点を持つ日系企業の中欧担当として採用が決まりました。懐かしのプラハには、度々出張に行く機会があります!
ドイツに進出している日系企業の多くは、ドイツだけではなくヨーロッパ市場全体を管轄しているからね!各国のノウハウを知る日本人人材は欲しいところ
ドイツの日系企業に応募するには?
中々人材募集の情報がオープンになっていないドイツの就職市場、そのため、まず最初の一歩としては「採用情報」に行きつくことがテーマです。
やり方の一つとしては、インターネットを通じた地道な情報収集が挙げられます。Glassdoor等、大手のインターネットを通じたリクルート系などでは、日本語人材の募集を度々目にすることが可能です。
もう一つは、当社のようなドイツに拠点を持つ就職エージェントへのコンタクトを介して、自分に適した職を見つける方法も人気です。
特に、日本国内での転職活動と違い、ビザや転居など、手続き上の困難が多く生じることから、海外就職は日本人にとって「難しい」とされています。
以下のような体験談で、当社が手掛けたドイツ就職の事例を紹介しています。海外留学後にヨーロッパ滞在を考える場合、こうしたドイツの日系企業への就職も一つの手段として人気が増えつつあります。