国境を越えたヒト・モノの流れは留まることを知らず、ここヨーロッパにおいてもグローバル・モビリティがトレンドになりつつあります。イギリスの大学を卒業してドイツで働く、ドイツから転勤でオーストリアに移住する、といった例はグローバル人材にとっては自然なキャリアパスと見なされており、毎年多くの人材が国境を越えて就職・転職しています。
このグローバル・モビリティの流れはヨーロッパに住む日本人にとっても同じで、国境を越えた転職が盛んになっています。
2024年現在、在留日本人の数が多いヨーロッパの国はイギリスとドイツの二強ですが、イギリスはEU加盟国ではありません。そんな非EU加盟国のイギリスからEU加盟国であるドイツに転職することは、日本人にとって可能なのでしょうか?また、可能だとしたらどのような手続きが必要になってくるのでしょうか?
・イギリスからドイツへの転職を考えてる人
・ヨーロッパでの転職環境に興味のある人
イギリスからドイツへの転職は可能か?
イギリスからドイツへの転職や移住に関して、特にその行為自体を制限する法律は存在しません。そのため、可能か否かという問いには「可能」と答えることができます。
もっとも、イギリスは既にEU加盟国ではなく、ドイツとの間でモノやヒトの移動に対して緩和規定を設けているわけでもないため、イギリスで就労ビザを取得していた日本人がドイツに転職したい場合、ドイツで新たに就労ビザを取り直す必要はあります。
その意味では、ドイツ国内、あるいは日本国内での転職と異なり国境を跨ぐ分、通常の転職よりも難易度が高いと言えるでしょう。
イギリスからドイツへ転職するメリット
とはいえ、全く未知な国からの転職と比較すると、隣国同士での転職になるため、日本からドイツへ転職するよりはハードルが低くメリットを享受できる部分があります。以下、イギリスからドイツへ転職する上でのメリットを見てみましょう。
仕事が見つけやすい
イギリスはEU加盟国ではないものの、地理的にはドイツと同じヨーロッパの国であるため、ドイツ人にとっても馴染みやすい国であると見なされます。
すでにイギリスの大学を卒業した、イギリスで仕事をしていた、などの経験がある場合、ドイツの雇用主側からしても「すでにヨーロッパの仕事文化を経験したことがある」として、全くヨーロッパでの就労経験が無い人間よりも優遇される可能性が高まります。学歴に関しても、イギリスの大学名を知っているドイツの企業は多く、一般的に受け入れてもらいやすいと言えるでしょう。
ドイツの会社でも、海外市場にビジネスチャンスを見出すことが多く、イギリス生活で培った英語が堪能であれば大きな武器としてアピールポイントになります。
生活に馴染みやすい
日本からヨーロッパへの移住では、気候や文化の違いに戸惑って体調を壊す人も少なくありませんが、イギリスとドイツは良く似た気候、緯度、文化圏に位置しており、そこまで大きなカルチャーショックを感じることなく移住できることが想定されます。
イギリスの首都ロンドンからドイツ最大の日本人街のあるデュッセルドルフは距離にして約500km、飛行機であれば1時間半で移動できる距離(ほぼ東京-大阪間と同じ距離)にあるため、面接や引っ越しも他国に比べるとしやすいという長所を持ちます。
年金協定
イギリスとドイツは年金協定を結んでいるため、年金加入期間を通算することができます。例えば、ドイツでの老齢年金受給資格は「5年以上の年金支払い」で、仮に3年しか働かずに国を去った場合、将来老齢年金を受け取ることはできません。
しかし、年金協定がある国同士であれば各国で支払った年金の期間が通算できるため、例えばドイツで3年、イギリスで2年年金を支払ったとなると、将来ドイツの年金を受け取ることができるようになるのです。
(※年金支給額が合算されるわけではないので注意)
免許証の書き換えができる
日本からドイツへ引っ越す場合もそうですが、 イギリスからドイツへ引っ越す場合も一定の条件を満たせば免許証の書き換えが可能です。地元(住民票に紐づいている市町村)の交通局で申請すれば発行されることができ、わざわざもう一度試験をパスする必要はありません。
もっとも、イギリスは日本と同じ左通行の国なのに対して、ドイツは右側通行・・免許証の書き換えが済んだら、少し練習をしたほうが良いかも知れませんね。
イギリスからドイツへ転職するデメリット
似た文化圏に属する国とは言え、やはり国境を越えた転職には手間や面倒も付きまとうこととなります。イギリスからドイツへ転職することで、どのようなデメリットが生じるのでしょうか?
英語が通じないところがある
英語が公用語のイギリスと違い、ドイツの公用語はドイツ語であり、若い人たちの中では英語が堪能な人が多いものの、地方や年配の方などの中には英語が苦手な人も多く、住むところによってはコミュニケーションに苦労を覚えることがあるかもしれません。
手続きが煩雑
イギリスはEU圏内ではないため、イギリスからドイツに引っ越す際には年金、保険、住所変更など種々の事務作業が発生します。
就職活動に時間がかかる
イギリスからドイツに就職活動をしようとなると、何度も面接のためにドイツに飛行機で飛ぶこととなり、交通費や宿泊費など多くの時間とお金を費やすことになります。ドイツ国内では面接の交通費は会社側が負担することが一般的ですが、宿泊等は通常想定されていないので、交通費含め常に確認するのが良いでしょう。また、履歴書の書き方や面接のマナーなど、イギリスとは異なる部分も少なくなく、場合によっては苦労を要します。
そのため、ドイツに全く知見が無い場合は自力での転職は難しく、当社のような人材紹介会社を活用することをお勧めします。
ドイツでもイギリス同様、現地に進出している大手日系企業は日本語を話せる人材を募集している傾向にあり、こうした企業はイギリスなどヨーロッパへの海外経験を高く評価しています。イギリスからドイツへ、国を越えて移住や転職を考えている場合、自身の強みが活かせる在独日系企業への応募を選択肢の一つとして考えてみても良いかも知れません。