ドイツ就職の際に知っておきたい日本とドイツの仕事文化の違い

2019-07-15 | タグ:

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多くの日本人、あるいは日本の仕事文化に慣れた者にとって、ドイツの仕事文化は異質にうつることがあります。

日独の仕事文化の違いは、特に職場の障壁やトラブルを招くこともあり、知らずにいると問題の根源に気が付かないケースが少なくありません。

今回は、日本人やドイツ国籍以外の者がドイツの職場で働いた際に覚える困難、あるいは日系企業で働くドイツ人の覚えるトラブル等、日独の仕事文化の違いがもたらす問題とその解決方法などについて解説していきたいと思います。

ドイツと日本、仕事文化の違い

仕事文化の国ごとの違いに関する研究は、20世紀後半にオランダの社会学者Hofstedeが国ごとの仕事の文化的差異を数値化したところから、多国籍企業などにも着目されるようになりました。

Hofstede教授の原初的な異文化ビジネスモデルでは、国民性の違いが、「個人主義の強さ」「不確実性の回避傾向」などの6つの見地からスコア化されています。

こうした「文化的差異」に関する研究は、Hofstede教授以降も盛んにおこなわれ、日米、日独など先進国間の文化的差異がもたらすビジネスへの影響、といったテーマも広く扱われています。

例えば以下の表は、日独共同で合弁会社を設立した際に生じた文化的差異についてのものです。見ての通り、仕事文化が似ていると言われる日本とドイツでも、こうした大きな違いが見受けられ、しばしばビジネスの妨げになることが確認されています。


(Adapted from Brannen and Salk, 2000)

以下、具体的に日独文化間で障壁となるテーマについて、詳しく解説をおこなっていきます。

個人主義vs集団主義

日本とドイツの仕事文化を比較する上で欠かせないのが、この「個人主義 (individualism)」と「集団主義 (collectivism)」の別です。

日本の仕事文化は、集団のハーモニーを重視する、チーム主義的な日本人の国民性に基づいて醸成されてきた側面があります。

そのため過去数十年間、日本企業は「チームのネットワークによる情報のすばやい共有」「従業員同士の暗黙知の醸成」など、社内での情報共有力をその産業発展の糧として成長させてきました。

ジョブローテーション、終身雇用といった日本企業独特の文化は、長年同じメンツで仕事をし、社内の情報共有をより密にすることを目的に行われる仕事文化です。

逆にドイツのように、個人の専門性や個人プレーが重視される文化圏に目を向けてみると、こうした文化は中々見受けられません。この文化の違いが(ドイツの)職場に持ち込まれると、具体的に以下のような齟齬を生みます。

  • 他部署との交流が少ない
  • プライベートでの干渉が少ない
  • 報連相が少ない

こうした文化的差異は、日本人の目からしてみれば「ドイツ人は独断で物事をおこなう」と映り、ドイツ人の目からしたら「日本人はなんでも一人で決められない」と映ります。

ルールを重視するvs場の空気を重視する

日本の仕事文化で「空気を読んだ」柔軟な対応が求められる一方、ドイツのそれは厳格にルールを遵守せざるをえない仕組みです。

例えば、有給の取得にしても、日本の場合有給を使うのが憚られるような場面でも、ドイツ人は「有給は労働契約書に定められた労働者の権利」として、憚らずに使用します。

それゆえ、ドイツに支店を持つ日系企業は度々「ドイツ人は空気を読まずに有給を取る」という悩みを抱えますが、実際に契約書に明文化された権利である以上、それを忖度させることは難しいのがドイツにおける実情です。

逆に、日本人がドイツ企業で働く場合、明文化されたルールに従うことに窮屈さを覚えるケースが少なくありません。ドイツ企業が「特例」「規格外」といった措置を講じることは基本的になく、あくまで形式にのっとって淡々とビジネスが進行します。

成果を重視するvsプロセスを重視する

アメリカ社会ほどドライではないにしろ、ドイツを始めとする西欧の会社の人事評価制度は、ある程度その仕事に対する結果とパフォーマンスに重点を置いています。

逆に、日本型の仕事評価は単なる成果主義ではなく、長期的な目線による、従業員を育てることにも配慮した「プロセス重視」型の評価軸です。

こうした文化的差異は、すでに各々の大学の成績査定システムなどにも反映されており、日本の場合出席点が加味される一方、ドイツの大学では成績査定は基本的に試験のみで計算されるケースが多い、といった具合です。

それゆえ、ドイツの職場では「ちゃんと仕事の成果を残しているんだから、周りが働いていても、残業せずに帰ります」というやり方が通ってしまう一方、日本式の場合「態度」「頑張り」「やる気」といった部分が周囲の評価に影響されてくる部分があります。

どちらが良いとは一概に言えない部分があり、ドイツ人の中にも「最終的な数字だけでなく自分の頑張りも認めてほしい」と思う者も少なくなく、そういった人材の場合、日系企業的なプロセス重視の評価を好む傾向があります。

逆に、ドイツ人の中でも効率性を重んじる者にとっては、日本的なプロセス重視型の仕事文化に窮屈さを覚え、離職原因のもとになります。

公私混同vs公私の分別をわきまえる

取引先との関係性にしろ、社内の人間関係にしろ、日本の場合明文化された契約書よりも、対人の関係性が時に重視される場面があります。

仕事終わりの同僚との飲み会、取引先とのゴルフ・飲み会など、日本特有のこうした仕事とプライベートの境が曖昧なイベントは主に「対人関係」をベースに行われるものです。

ドイツの場合、こうした公私混同の類は仕事上起こることは少なく、同僚や仕事相手との飲み会、食事、休日のゴルフ、といったイベントごとは滅多に催されません。

この辺は、日本側から見るとドイツ人が「ドライ」「ビジネスライク」として映る一方で、ドイツ側からしてみたら日本のやり方が「公私混同」として奇異に映るポイントです。

コンセンサスによる意思決定vs素早い意思決定

日本と西欧の意思決定プロセスの大きな違いは、「ボトムアップ」と「トップダウン」の別です。

日本の場合、社内の情報共有と多数決、集団議論による意思決定が好まれます。これは、上述のような「グループ主義」の傾向を反映したものであり、また社内のコンセンサスによって決定された場合、自らの意見が反映されることから、社員のモチベーションも上がりやすいと言われています。

一方で、ドイツの意思決定プロセスは上意下達。いわゆるトップダウン形式で、上の目標決定をもとに下がビジネスの戦術を決定する方法です。

日本におけるこの「コンセンサス重視」の意思決定は、リスクの回避、社内情報の共有を軸にする一方、意思決定までの時間がかかる、政治的なやり口(根回し)を必要とする、とした、日本のバックグラウンドを持たない者にはなかなか理解するまで時間のかかる部分もあります。

ドイツ人側からしたら、日本側の意思決定になぜそこまで時間と手間がかかるのか理解に苦しむことが多く、逆に日本側からしてみるとドイツ人の直線的な意思決定プロセスにリスクを覚えます。

上述のような文化的差異は、日独の文化の混じる職場で頻繁に起こりうる齟齬の一例です。実際に、こうした文化的齟齬は、時間をかけ、意思疎通することによって氷解させることができるケースが多く、「文化が違う」と諦めるのではなく、歩み寄る努力が必要です。

参考文献:

  • Brannen, Mary Yoko, and Jane E. Salk. “Partnering across borders: Negotiating organizational culture in a German-Japanese joint venture.” Human relations 53.4 (2000): 451-487
  • Hofstede, Geert, and Culture‘S. Consequences. “International differences in work-related values.” Beverly Hills, CA (1980)

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