2024年現在、海外に生活する日本人の数は129万人。つまり、日本の人口の100人に一人が海外に暮らしている状況です。その中には留学生や駐在員も多く含まれていますが、自力で海外に転職した「海外転職組」も多く含まれています。
こうした海外転職組の多くは、一度日本での就職を経験し、その後2~3年の社会人経験を経て海外転職に挑戦することが多く、文系職であり一見して海外転職と相性の悪そうな「営業」も実は多く含まれます。
このように、日本を飛び出て海外に営業として転職成功した人々はどのように仕事探しを行うのでしょうか?
この記事の読者層:
- 日本で社会人として営業経験がある人
- 海外で年収アップに挑戦したい人
- 自身の営業経験を活かして海外転職したい人
日本での営業経験がもたらすもの
分野や産業によって身につく知識には違いがあるものの、日本の会社で営業をおこなうと日本での一通りのビジネスマナーや社会人としての一般常識が見に着きます。
日本の会社での営業職で身に着くもの:
- ビジネス日本語
- 日本のビジネスマナー
- 日本での営業ノウハウ(ヒアリング能力、提案力など)
- チームワーク
- OAスキル(パワーポイント、エクセル等)
- 分野別専門知識
こうした知識やスキルの中で、国を変えても互換性があるものは「チームワーク」「OAスキル(パワーポイント、エクセル等)」、そして「業界の専門知識」であって、ビジネス日本語や日本のビジネスマナーなどは国やポジションによっては活かすチャンスがありません。
これが一概に「日本での営業経験」だけを武器に海外に転職しようとすると難しいと言われる所以です。そのため、海外企業で就職する際には、過去の日本での実績や評価を一度捨てて、また現地で「新人」としてキャリアをスタートせざるを得ない者も少なくありませんし、就活自体に苦労するケースも後を絶ちません。
一方で、海外で得られるポジションの中にはこうした日本での営業職経験が活かせるものも多数存在します。
そういったところに応募することで、採用の機会がぐっと高まったり、給料を多く見積もってもらえるケースが多く、過去の実績を無駄にせずに海外でのキャリアアップが可能です。
以下の職種や業界は、ドイツで日本での営業経験が活かしやすいポジションです。
カスタマーサポートデスク
海外の転職サイトなどを見ていて真っ先に目に留まりやすいのが「Japanese Speaking Customer Support」という種のポジションです。IndeedやGlassdoorなど、有名な就職サイトをチェックしてみると、日本語需要のある仕事のうち約3割以上は何らかの形で日本市場向けカスタマーサポート業務です。
特に、IT系のカスタマーサービスは、現地語での電話やメールに対応するため、各国企業とも各国語専用の窓口を設けており、日本語も需要の多い言語の中の一つです。
カスタマーサービスの特徴は、日本人に対する電話対応・メール対応がメインですが、中にはチームを管理するチームリーダーや、発送業務など貿易実務をおこなうこともあり、実際にどのような仕事内容になるかはポジションによりけりです。
一般的に、洗練された日本語(ビジネス日本語)スキルが必要とされることから、日本語母国語話者や、日本でビジネス経験がある経験者が求められやすいです。
一方で、営業時代に培った営業スキルが直接活かされるというわけではなく、あくまで「日本語要員」としての職務のため、必ずしも前職の営業経験が直接活かせるとは限らないのが欠点です。
カスタマーサービス職の仕事内容:
- 日本市場向けの電話応対
- 出荷した製品やサービスの対応
ビジネスデベロップメント
より外向きの業務や営業チャンスを求める場合、外資中小企業やスタートアップ企業の中で、日本市場開拓を目指す企業の「ビジネスデベロップメント職」への応募も魅力的です。
大企業の場合、すでに企業内に専門の部署が設けられていたり、すでに日本に進出済みであったりと、なかなか採用ポジションを見つけることが難しいですが、中小企業やスタートアップの場合、一から市場を作る必要がありますので、一個人の規模から採用をスタートするケースが多々あります。
こうしたポジションの場合、主な業務は日本市場リサーチ・日本顧客の開拓や現地代理店との折衝などで、基本的に日本市場が主戦場となることから、過去の日本での営業経験が最も重宝されやすい職種です。具体的には、以下のような業務内容です。
ビジネスデベロップメント職の仕事内容:
- 日本市場のポテンシャルの分析
- 日本市場における代理店企業などの選定
- 代理店企業などとの折衝
- 法的規制に対するサポート(輸出認可など)
デメリットとしては、結果が残せなかったり、採算が見込めない場合、中小企業の場合すぐに日本市場撤退を決めてしまい、その場合日本人がお役御免になることも少なくありません。試用期間でなんらかの実績が残せないと、契約更新に至らないことが多いです。
現地に進出している日系企業
言葉や文化の壁、そして就労ビザなどの問題などで中々自身の営業としての力を活かしにくい営業職ですが、海外転職を目指すときに最も自信を高く評価してくれるのが「現地に進出している日系企業」です。もっとも、現地企業と言っても工場等の場合現地マーケットへの営業活動が無く営業としての力を発揮しづらいため、アメリカやドイツなど、現地の市場をターゲットに営業活動を行える国の日系企業がおススメです。
海外の日系企業拠点数ランキング
1位 中国 | 31,047社 |
2位 アメリカ | 8,874社 |
3位 タイ | 5,865社 |
4位 インド | 4,790社 |
5位 ベトナム | 2.306社 |
6位 インドネシア | 2,046社 |
7位 ドイツ | 1,934社 |
8位 フィリピン | 1,377社 |
9位 台湾 | 1,310社 |
10位 メキシコ | 1,272社 |
例えばドイツに進出している日系企業の数は大小あわせ1,900社程度で、業務内容は多岐にわたりますが、ヨーロッパ市場の開拓、リサーチ、貿易実務やマーケティング業務などで、英語やドイツ語のスキルを活かしたダイナミックな活躍が見込まれます。
一見、こうしたヨーロッパ市場向けの業務に日本での営業経験が活かせないように思えますが、実際のところ、以下のような場面で日本の営業としてのスキルが必要になってきます。
ドイツで営業として就職した際の仕事例:
- 本社の日本人との折衝
- 本社向けプレゼン資料などの作成や提案
- 日本-ドイツの間の文化的仲介
- 本社ビジネスプランの現地への適用
親会社が日本にある以上、どうしても本社との折衝には「日本的な思考」「日本語能力」「高度な意思伝達能力」が必要とされるケースが多く、こうした場面で日本での営業スキル、交渉スキルというものがフルに活躍できます。
上述の本社との折衝業務に加え、ドイツ、欧州マーケットを開拓・発展させるうえで現地の法人との交渉なども期待されるため、英語、ドイツ語、異文化コミュニケーションなどのスキルも重宝されがちです。
海外で就職、というと頭に思い浮かびやすいのが現地企業への就職ですが、実際には就職チャンスは色々な分野にわたって存在しており、その中でも特にドイツの日系企業は日本での営業経験を活かしやすい職場の一つです。