ドイツの企業で実際の業務を開始すると、大学や語学学校では耳にしなかったような用語が度々登場し、時に困惑することがあります。今回のコラムでは、ドイツのメーカーで仕事をする際、特に覚えておきたいドイツ語のビジネス用語についてまとめていきたいと思います。
Kreditlinie
英語では「Credit Line」、日本語では信用供与枠と呼ばれるものです。特に、ドイツと他国とで貿易を行う時に度々用いられ、一番担当者にとってやりやすいのがこの「Kreditlinie」を利用する方法です。
具体的には、保険会社が取引相手に対する信用供与枠を算出(過去のキャッシュフローや売り上げ構成等を元に)し、仮に取引後に取引相手が支払いを渋っても、〇〇EURまでなら保険会社が担保しますよ、という保証限度額のことです。
例えば、与信調査の結果、シンガポールにある取引相手A社のKreditlinieが100,000EURと算出された場合、この限度までであれば、前払いを待たずにA社に出荷しても売掛金を回収できないリスクが発生しません。
後述するその他の支払い方法では、売る側または買う側のリスクが発生したり、あるいはL/Cのように煩雑なプロセスが発生するため、このKreditilinieに基づいた取引が好まれます。
Auftragsbestätigung
英語では「Order Confirmation」、日本語では「注文確認書」と呼ばれます。一般的には、まず顧客が「Auftrag(発注書)」をメーカー側に送付(通常メール形式)し、それを受けてメーカー側が「Auftragsbestätigung(注文確認書)」を発行します。これで初めて取引が成立となります。
中には、「着手金を受け取ってから」製造が開始されるものもありますが、上述のようなKreditlinieを利用した信用取引の場合、このAuftragsbestätigungが発行された時点でメーカーは発送の準備に取り掛かり、梱包や書類などのキャンセル料が発生する形になってしまいます。
umsonst/berechnet
前者は「無料で」、後者は「有料で」という意味です。顧客にサンプル(Muster)を発送する際に、場合によってはサンプル費用や発送費用を顧客側が負担する場合もあり、その場合は「Berechnet」でサンプル発送を依頼する形になります。
ドイツ人は経費にシビアで、割と少量のサンプルやカタログ発送でも中々サービスをしたがりません。その場合、その顧客が将来どれほどの利益を生むのか、どのくらい重要なのか、感情論抜きで数字と理論で説得する必要があります。
Minimum-Bestellmenge
英語では「MOQ (minimum order quantity)」、日本語では「最小オーダーロット」等と訳される用語です。製品カテゴリにもよりけりですが、スタンダードな製品からスペックを変更しなくてはいけない場合、工場のラインを変えるためこの最小オーダーロットが発生します。
ドイツでは価格優位性を保つために製品は日本よりも規格化されており、その分スペックを変えることに抵抗を示し、最小オーダーロットを要求されることが少なくありません。
Lagerbestand
英語の「Stock」、日本語の「在庫」を示すものです。メーカーは、カタログに品番のある製品に関しては在庫を抱えていますが、時期によってはこの在庫の量が少なくなったり、大型の発注に対応できないことがあります。
工場を動かしてから完成するまで(製品にもよりますが)やはり数週間はかかるため、在庫がなくなってから発注すると時間にロスが生じます。そのため、工場の稼働具合と在庫を定期的に調べ、顧客からの発注に備える必要があります。
Lieferzeit
英語では「Lead time」、日本語では「納期」と呼ばれるものです。会社の形式にもよりますが、基本的に製造(在庫がない場合)、検品、梱包、配送、の全てをひっくるめて納期と呼ぶため、特に在庫が足りない場合は多めに納期を見積もらなくてはいけません。
Artikelnummer
英語では「item number」、日本語では「商番」と呼ばれるものです。発注をする際は、基本的にこのArtikelnummerに基づいた発注を顧客が行います。
ちなみに、商品を廃番にすることをauslaufenと言います(英語でDiscontinue)。
USP
ドイツの会社内であっても、英語の用語は度々使用され、その中の一つがこの「USP (Unique Selling Proposition)」で、日本語では製品の「強み」「売り」と呼ばれるものです。ドイツ語ではAlleinstellungsmerkmalと訳されますが、長すぎるのであまりこの用語は使われません。
顧客へのプレゼンを行う際に、よく「この製品のUSPは何か」というテーマになります、その際には、その製品にあって他製品には無い(あるいは少ない)強みを用意しておいて紹介することで、ドイツ人を説得しましょう。
UVP (unverbindlicher Verkaufspreis)
英語ではRecommended retail price, 日本語ではメーカー希望小売価格と呼ばれるものです。メーカーと最終消費者の間にいくつかの層が入り込む場合、この「UVP」が最終的な価格の目安になり、販売側はある程度の価格戦略を立てやすくなります。
Unverbindlichとは「拘束力のない」、Verkaufspreisは「販売価格」なので、小売り側に特定の拘束力のないあくまで「希望小売価格」となるわけです。