ドイツの駐在員生活: 公私をわきまえた正しいドイツ人社員とのコミュニケーションとは?

2019-08-10 | タグ:

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日独の仕事文化を比較すると、多くの点で違いが見受けられます。特に、たびたび日本人駐在員を困惑させるのが「プライベートと仕事」の線引きです。

日本では一般的な仕事後の飲み会も、ドイツ人社員にとっては迷惑にとられることもありますし、逆に日本人ばかりで昼食や飲み会を行っていると、「疎外されている」ととらわれかねません。

今回は過去の実例をもとに、駐在員としてドイツに赴任した後の、正しいドイツ人社員とのコミュニケーション、及びプライベートの過ごし方を解説します。

現地社員とのコミュニケーションはなぜ大切か

ドイツに限ったことではなく、世界共通で、駐在員と現地社員の間でのコミュニケーションの持つ重要性が指摘されています。

経営学の大家、オランダのエラスムス大学の研究によると、駐在員の持つコミュニケーション能力、異文化への興味などは仕事上のパフォーマンスと密接に関係しており、駐在員の選定の際にたびたび指標として引き合いに出される指標です。

似たようなカナダの大学の研究によると、現地社員とのコミュニケーションは社員との信頼性を築き、職場のパフォーマンス向上に役立つ一方で、自身の現地文化への適合にはあまり活かされないため、職場のコミュニケーションを図りつつ、別のコミュニティに関与することを勧めています。

現地人とのコミュニケーションのもたらすものは、単なる目に見える信頼関係の構築ではありません。多くのドイツ人にとって、日本人は自分とは異なる、いわゆる「異質なもの」として映ります。

これは、差別ではなく、人間に共通する「自分とは異なる文化から来たもの」に対する不信感です。心理学的にも、人間の持つ無意識のバイアスと、職場への悪影響がたびたび指摘されており、それらは、駐在員と現地人の賃金格差に対する不信感、キャリアアップの際の不公平感、といった際に表面化し、職場の混乱を招きます。

こうした問題に対する一つの解決策が現地社員との密接なコミュニケーションで、多くの場面で、コミュニケーションとそれによって構築された信頼が、不信感、不満感の解消に繋がることが指摘されています。

さて、それではドイツ人社員にとっての「コミュニケーション」とは一体なんなのでしょうか?

ドイツ人従業員とのコミュニケーション

上述のように、現地従業員とのコミュニケーションは自身の適応や職場のパフォーマンスに良い影響を与える一方、日本人駐在員にしてみれば、どこまで現地従業員(ここでは便宜上「ドイツ人」と表記)と密接にコミュニケーションしてよいのか、線引きの難しい部分があります。

ドイツ人の中には、過度にプライベートに関わらないでほしいという声がある一方、日本人の駐在員は常に日本人同士で昼食に行ってしまって疎外感を感じる、という声もあります。

そのため、距離感のつかめない場合、以下のようなコミュニケーションは一般的にドイツ人従業員との間で有効です。

  • 現地従業員との昼食(毎日ではなく、週に1~2回程度)
  • 休憩中などの簡単な会話(夏季休暇の過ごし方、等)
  • 出張後のささやかな手土産(職場のみんなで食べられるような)
  • 誕生日の職場でのお祝い、等

もちろん、人によりけりであって、ドイツ人の中には職場の人間とのバーベキューなど、さらに密接なコミュニケーションを好む者もいれば、そうした干渉を嫌がるものもいます。

ただし、基本的に外資系企業に就職し、かつ長くその会社に残っているものは、多かれ少なかれその企業の持つ文化に惹かれる傾向にあるため、日系企業で働くドイツ人社員も「多少」日本的なコミュニケーションやアプローチを期待する部分があります。

職場以外でのネットワークとのコミュニケーション

職場でのコミュニケーションをより円滑にし、自身のドイツ文化への適合に役立つのが、職場以外でのコミュニティへの関与です。

日本の職場で働くドイツ人社員は「日本化」された傾向があり、ドイツ人一般を代表する性格とはいい難い傾向があります。それゆえ、ドイツ文化への近接を図るためには、職場以外の場でのより生々しいドイツ文化へのアプローチが重要になってきます。

この「生々しいドイツ文化」への接近は、中々難しいものがあります。特に、Düsseldorfのように、レストランから美容院まで、なんでも日本語で完結してしまう環境が整ってしまっていると、好き好んで現地文化と折衝するチャンスが生まれてきません。

また、実際に生々しいドイツ文化との邂逅が、多くの日本人にとって不愉快に感じることも事実です。荒々しい場末のパブのサッカーファンの飲み会や、歯に衣着せぬドイツ人たちの物言いを見ていると、この文化を理解するのは難しい、と感じる日本人も少なくありません。

以下のような場で、一般的に職場以外のコミュニティの友人を作ることが可能です。

  • スポーツクラブに参加する(サッカー、テニス等)
  • 語学学校に参加する、語学交換(タンデム)の友人を作る
  • 友人の紹介で、ネットワークを広げていく

特に、ドイツ以外の場でも共通することですが、現地の言葉を知ることで、急激に現地文化との壁が薄くなることがあります。たどたどしい「Guten Morgen(おはよう)」であっても、相手側のドイツ人からしたら、ドイツ語を勉強しようという努力をしている、と嬉しく思うことがあります。

ドイツ駐在は成長のチャンス?

コミュニケーション能力、異文化への適応性、というのは、一方で先天的な性格に依拠する部分がある一方、他方で経験を通じても向上することが研究データとして証明されています。

ただし、ここでいう経験とは、単に「ドイツに住んで駐在をした」という経験ではなく、「ドイツに住んで、積極的に現地文化とコミュニケーションを図った」というものです。

具体的には「新しい文化の発見」「海外文化との障壁」「責任感の増加」といった経験が、海外駐在員として必要なスキルを身に着けるチャンスと言われています。

海外生活、特に全く異なる文化的背景での生活では、障害やトラブルはつきものです。こうした障害やトラブルに出くわす場に自ら進んで出ていき、乗り越えていくことで、駐在としての生活を終えるころには本当の意味での「海外人材」として、大きく一皮向けているケースが数多くあります。

Reference

  • Bonache, Jaime, Juan I. Sanchez, and Celia Zárraga-Oberty. “The interaction of expatriate pay differential and expatriate inputs on host country nationals’ pay unfairness.” The International Journal of Human Resource Management 20.10 (2009): 2135-2149.
  • Bruning, Nealia S., Karan Sonpar, and Xiaoyun Wang. “Host-country national networks and expatriate effectiveness: A mixed-methods study.” Journal of International Business Studies 43.4 (2012): 444-450.
  • Mol, Stefan T., et al. “Predicting expatriate job performance for selection purposes: A quantitative review.” Journal of Cross-Cultural Psychology 36.5 (2005): 590-620.

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