【日本とは違う!】ドイツ社会の人事・採用事情について

世界的に見ても、日本の採用システムは特殊であると言われています。大企業の「新卒一括採用」「出向制度」「ジョブローテーション」などは日本固有の人事・採用システムの一環であり、欧米諸国ではあまり見かけることはありません。こうした人事制度は、単に企業の文化であるにとどまらず、日本の社会制度全体を反映させていると言われています。

同じく、ドイツの採用制度に目を向ければ、おのずとドイツの社会構造や、キャリアに対する姿勢などが明らかになってくるのではないでしょうか。今回は、日本人にとってあまり知られていない、ドイツの採用事情について徹底解説を行ないます。

ドイツの人事担当者が目を通すポイント

様々なファクターはあれど、書類選考ではじかれるか否か、最終的に採用に結び付くか否か、これには特に以下の4つの条件が密接に関わっています。

  • 過去の職歴・インターンシップ歴・転職歴
  • 学歴・大学の成績
  • 語学力
  • 人格・ソフトスキル

その他「EDVスキル」「浪人・留年の有無」「ボランティア活動」「MBAの有無」「特殊な資格の有無」などを勘案する企業も多少は存在しますが、一般的な職種の場合には上述の4つの組み合わせで9割方合否が決まると言っても過言ではないでしょう。

過去の職歴・インターン歴・転職歴

ドイツで仕事の応募を行った際、まず一番最初に人事担当者が目を通すのが「職歴」の部分です。企業側が応募者を振り落とす一番主な理由が「職歴不足」によるもので、全体の56%を占め、即戦力を欲するドイツ企業にあっては、職歴不足は最大のネガティブポイントにとらえらていることを指し示しています。

Universum社調べを元に作成)

後述のように、ドイツには「新卒文化」というものがないため、大卒者(新卒者)も中途採用者も同じ土俵で仕事を獲得しなくてはならず、仕事経験のない大卒者は圧倒的に不利な市場となります。

そのため、なんとか形式上の実績を積むためにドイツでは「Praktikum」という有給の長期インターンシップが一般的で、Research Gate調べでは学部卒者の62%が、修士卒者の81%がこのインターンシップを経験済みです。

過去の転職回数に関しては、あまり多すぎるとネガティブに捉えられるので注意が必要です。ドイツ人の同一雇用者における平均勤続年数は約10.9年で、日本の13.5年と比較してもわずか2.6年しか変わりません。アメリカのような超転職社会と異なり、ドイツはマイルドな転職社会であることを念頭に置きましょう。

転職ペンギン

ジョブホッピングの文化と思いきや、ドイツ人の転職回数は意外と少ない!

フェリ

アメリカと混同されがちね。ドイツ転職事情の詳細に関しては「賃金志向だが実は転職回数は少ないドイツ人」の記事を参照してね

学歴・大学の成績

ドイツはイギリス同様、学歴社会で知られています。ただし、日本のように大学名が重要視されるのではなく、以下の3点「大学の専攻」「大学の学位」「大学の成績」が卒業後も就職の際に評価の対象になってくるといった形です。

後述のように、ドイツは日本のようなジェネラリスト型ではなくプロフェッショナル型の社会で、大学の専攻と社会に出てからの職種は似たもの・同じものが望ましいとされています。例えば、日本のように「文学部卒」で「営業部」になったり、「社会学部卒」で「人事部」になったり、というのはあまり一般的ではありません。

学位に関しては、学部卒、修士卒、博士号卒に分類され、学部と修士とでは年収に10~15%の開きが出てきます。特に、日本と違い、文系・理系ともに学部卒の4割強の学生が修士課程に進むドイツにあっては、修士の学位を持つ学生の数は多く、専門性ありとみなされて重宝されます。

大学の成績に関しては、GPA換算で2.5以上であれば及第点、3.0以上であれば就職で不利になることはなく、3.5以上であれば有利、といった形です。

ちなみに、Universum社の調べを借りると、採用時に企業側が大学の成績を特に重要視するケースは29%、学部か修士かで採用に影響を与える率は27%となっており、少なからず採用の際に重視されることが窺えます。

転職ペンギン

ドイツでは大学の成績は、日本でいう大学名並みに重要視されるんだね

フェリ

入るのが難しいと言われる日本の大学システムと、出るのが難しいと言われる欧米の大学システムの違いね。私の大学院では、ちゃんとした成績で卒業するためには、毎週40時間の勉強が推奨されていたわ。つまり平日は毎日7~8時間勉強ということ・・

語学力

日本では必須とみなされる職種は限られている英語力ですが、ドイツ人事担当者の半数以上が候補者に対し「ビジネスレベルの英語力」を求めています。ドイツ経済はEU圏と密接に結びついていることから、他国との貿易やマーケティングをするための共通語として英語が必要になってくる、というわけです。

ドイツ語に関しては、職種によってはマストではないものの、やはり社内のコミュニケーションを円滑にするために必要となるケースが少なくありません。加えてその他職種(海外市場担当、カスタマーサービス等)によっては英語、ドイツ語以外の語学の知識も必要になるケースが多く、ドイツ市場と密接な関係にあるフランス、イタリア、スペインあたりの知識があるとアドバンテージになります。

転職ペンギン

社内ではドイツ語、社外ではドイツ語&英語、っていうのがドイツの一般的な企業の住み分けになりつつあるね

フェリ

ちなみに、全体の応募者のうちドイツ語不足が理由で落とされる割合は6割だとか(Human Resource社調べ)。ドイツ人は確かに英語力に長けているけれども、企業内部ではドイツ語でコミュニケーションしたがる層は多いわね

人格・ソフトスキル

ドイツと言えば、ハードスキル面での要件が重要視されるかと思いきや、上述のような要件以外にも、実際には面接などで観察される「ソフトスキル面」「人格面」などが重要視される傾向にあります。

同じドイツ語圏であるスイスの統計によると、人事担当者が最終的に採用の決断を下すか否かに関わるプロセスとして、影響度の大きいものの順に「面接での印象」「履歴書」「能力試験」「他者からの推薦」「SNSなどのプロフィール」となり、履歴書などのもたらす過去の経歴よりも、面接でのふるまいや人間力を高く評価されることが分かります。

まず履歴書や能力試験で職歴・学歴・ハードスキル面での足切りをおこない、その後面接で人格・ソフトスキル面での適性を見て採用か否かの判断を下す、というのが一般的なドイツ企業の採用プロセスです。

具体的に好まれる性格としては、以下のようなものが挙げられます。

  • チーム力や協調性
  • 行動力・決断力
  • 精神力やメンタル、チャレンジ精神
  • クリエイティブな思考
  • 仕事に対する前向きな姿勢
転職ペンギン

ドイツ人てスキルや実績ばかり見ると思っていたけど、それだけでもないんだね

フェリ

いくら個々の実力が優秀でも、仕事はチームワークになることが多いし、性格が合わないとすぐに会社を辞められちゃうからね。自社の社風にあっているかというのは離職率に影響を与えるって、人事マネジメントの最近の潮流で脚光を浴びているわ

採用の経路

どのような経路を通じてドイツの採用は行なわれるのでしょうか?

まずは採用者側の目線で見てみましょう。ドイツ企業はお金にシビアなため、広告費の発生するウェブ求人や、エージェントの使用を躊躇いがちです。そのため、ポジションに空きができた際に活用するルートの最たるものは費用のかからない「紹介・縁故採用」となります。

ついで「転職サイトへの求人」「自社ホームページでの求人」と続き、日本で割合の高い「エージェントを活用した採用」「紙媒体による広告」の割合は、費用の都合で使用度が低いことが窺えます。

Statistaを元に作成)

続いて、求職者側の目線から見てみましょう。

ドイツ人の応募で一番オーソドックスなのが「転職サイト上での応募」でIndeedやGlassdoorなど転職サイトを通じた応募となります。

「個々の企業のウェブサイトからの応募」や「転職SNSを用いた転職」などが2位~3位にランクインしており、「縁故採用」は全体5位となりました。

JOB AMBITIONを元に作成)

転職サイト上での応募

求職者全体の3分の2がこの「転職サイト上での応募」を用いています。

求職者側のメリットとしては、フィルターなどで横断的に検索をかけられる、自分の応募したい業種・職種にまとめてリーチできるなどの点が挙げられ、特にスピードを重視する昨今の転職活動にあたって重宝されがちです。

一方でデメリットとしては、転職サイトに掲載されていない求人情報には出会えない、他の応募者も同じようにサイトを活用して応募するので競争率が高くなる、人事担当者側には多くの応募が来るため足切りが行われやすい、などが挙げられます。

個々の企業のウェブサイトからの応募

求職者全体の3分の1程度が「個々の企業のウェブサイトからの応募」を用いています。

求職者側のメリットとしては、転職サイトに載せられていない情報にリーチできる、転職サイトのように世界各国の応募者が殺到するわけではないので足切りが緩くなる傾向がある、などが挙げられます。

対してデメリットは、一つ一つの企業サイトを訪れて調べなくてはいけないので、転職サイトを活用するのに比べて大幅に時間がかかることです。

縁故採用

求職者全体の4分の1程度の人気を占めるドイツの縁故採用です。

ドイツで縁故採用は「ビタミンB採用」とも言われており、ビタミンBとは「Beziehung(関係性)」の略で、「関係性を用いた採用プロセス」という意味の言葉遊びです。上述の通り、企業側の費用的な負担も少ないことから、とりあえず縁故採用できそうか社員に聞いてみて、並行して転職サイトなどで求人を出す、ということも少なくありません。

ただし、縁故採用だからといって無条件で採用になるわけではなく、基本的には一般的な採用プロセス同様、書類選考や面接を通じての採用となります。他の採用プロセスに比べて倍率は低く、チャンスであることが応募者側のメリットとも言えます。

転職エージェントを用いた採用

求職者全体の割合でいうと4分の1程度で、割合の低い部類にあたりますが、転職サイトなどで見つからないような、特殊なスキルを求める職種・業界や、特殊なサポートが必要な場面などでは転職エージェントを用いた就職活動が活発です。

例えば日本人がドイツで就職活動をしようとすると、個人では対応しきれない部分が多く、当社のような転職エージェントを間に挟む傾向にあります。

転職ペンギン

国内の転職と違って、日本人がドイツ転職となるとビザ手続きは一人では対応しきれないことが多いね

フェリ

当社はドイツ求人の中でも特に日本人に親和性の高い案件を専門に扱っている転職エージェントです。仕事探しだけでなく、内定をもらった後の手続きなども無料でサポートしています。ドイツ就職に興味がある方はここから応募フォームに進んでね

採用システム

ドイツ社会の採用システムは、日本とは異なる様相を呈しています。これは、採用システムだけでなく、ドイツ社会全体がこのような働きをしているためであって、仮に日本社会で同じような方法を真似しようとしても、短期間でうまくいくことはないと言われています。

プロフェッショナル型採用

日本の社会全体のキャリア形成を、同一企業内の様々な職種に対応できるようにする「ジェネラリスト型」のキャリア形成だとすると、ドイツ側のそれは同一職種内の様々な企業に対応できるようにする「スペシャリスト型」のキャリア形成です。

上述のとおりドイツでは、大学の専攻、インターンの分野、企業でのキャリアと、それぞれのライフピリオドで一貫性を持った専門性を保持することが望ましく、仮に大学の専攻が「金融」だとしたら、大学院の専攻は「アンダーライティング」、インターン先は「銀行のアンダーライティング部」で、就職先でのキャリアも銀行や保険会社の近しい部署、という形になります。

そのため、例えば一度「総務部」を経験したらその後のキャリアもずっと「総務部畑」でいくか、仮にどこかで職種を変えたいとなると、給料テーブルがまた初めからやり直しになります。

転職ペンギン

マイスター制度で有名なドイツらしい、「餅は餅屋」の文化だね

フェリ

一度進路を選んだら、生涯変えることは難しいわ。この辺の理解に関しては過去記事の「ドイツ就職時に有利な日本の学歴は?」を参照してね

ポジション型採用

日本の採用システムは、新卒一括採用に代表される「人に職をあてはめる型」の採用方針で、大企業は一括して新卒を雇い、その後どこの部署に配属するのかを決めます。日本の伝統であった終身雇用を守るため、仮にそのポジションの重要性が薄れても、他部署への配置換えや出向を通じて、雇用は守られます。

ドイツの採用システムはその真逆の「職に人を当てはめる型」で、ポジションに空きができたり、新しく人員が不足してようやく人材の確保に動くシステムです。そのため、基本的に採用は通年採用・中途採用となり、転職サイトなどでポジションの空きがでるのを待つ形になります。終身雇用文化ではないので、仮に採用したポジションの意味が無くなったり、事業を閉鎖するとなると、従業員も同じタイミングで解雇となります。

R S
Senior Consultant

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