ドイツで念願の就職に成功した方でも、『別の会社からオファーをもらった』、『上司との衝突』、『変化を求める』など様々な理由から転職を余儀なくされるケースは多々あります。

ただし、ドイツでも退職というのは非常にセンシティブな事柄でもあり、円満退職のために気を付けなければならないことが多く存在します。今回のコラムを通して、計画的な退職およびトラブル回避の参考にして頂ければ幸いです。

※本記事の内容はあくまで参考です。個々の会社によって退職の方法は異なりますので注意してください

退職願の出し方

退職願の言語

現在勤めている会社によってどの言語で提出すべきか変わります。会社が日系など外資であってもドイツの企業であっても、上司がドイツ人の場合はドイツ語で書くのが一般的です。一方、上司が日本人の場合は英語で書かないと伝わらないかもしれません。

複数の人種が混在している場合、人事や総務のドイツ人と日本人の上司、双方が理解できる言語、つまり英語が最もトラブルを避けやすい一般的な言語となります。

退職願の書き方

ドイツ民法第623条で定められている通り、退職願は直筆サイン入りの手紙で提出されなければ有効と見なされません。EメールやWhatsAppなどでのメッセージは無効です

退職願が網羅すべき内容:

  1. 正確な会社名と住所
  2. 日付(退職願の作成日と退職したい日付の両方)
  3. 件名(明確に『退職願(Kündigung)』と記載)
  4. 受取人の名前(上司もしくは人事部)
  5. 本文で退職することを明記
  6. 退職日(自身が退職を希望する日付)
  7. 退職申告期間(退職希望日が法的に問題ないことを証明するため)
  8. その他お願い事(労働証明書など)
  9. 直筆サイン

労働証明書は、転職先の会社に要求される可能性がありますので、可能であれば退職時に会社に書いてもらうのが理想的です。将来的に提出が必要になってくるケースもありますので、可能な限り入手しておきましょう。

退職願ドイツ語テンプレート

退職願の提出方法

前項目で書いた通り、直筆サイン入りの手紙で提出しなければならないため、郵送もしくは直接手渡しをする必要があります。郵送の場合は、書留にして退職願の到着日を明確にするのが好ましいです。

ただし郵送する場合でも、事前に上司や人事部に口頭で話を通しておくべきでしょう。労働証明書などの取得のためにも、できる限り良好な関係を保ったまま退職できるよう心掛ける事が大切です。

退社願いを出すタイミング

試用期間内であれば2週間の通知期間となりますが、試用期間後の場合、自主退職の退職通知期限は4週間や3か月など様々(※勤めた年数によって異なる)で、15日または月末、あるいは四半期末に対して通知しなければなりません。気を付けなければならない点は、4週間は28日間という意味です。具体的な例を出して説明していきます。

例1)
2020年9月1日(火)から会社の籍を外す場合(8月31日が最終出社日)
2020年7月31日(金)までに退職願を提出

例2)
2020年9月16日(火)から会社の籍を外す場合(9月15日が最終出社日)
2020年8月17日(月)までに退職願を提出

15日で退職する場合、最後の出勤が15日となります。また、退職願を郵送した場合、会社のポストに届いた日が、退職願が有効となる日付です。会社側が開封したかどうかは関係ありません。

雇用契約書上の退職通知期間は被雇用者ごとに異なっており、円満退職のためにも契約書上の告知期間に沿って転職を計画されることをおすすめします。この期間は会社との交渉によって短縮することも可能ですが、会社の慣習や仕事量等の状況に応じて適切に判断されることが望まれます。

転職先との面接のときの休みの取り方

多くの場合、次の転職先が決まってから退職願を出すことになるでしょう。つまり、次の転職先の面接はフルタイムで勤務している最中に行わなければなりません。

企業側に『転職のための面接』という理由での休みを認める義務はありません。したがって、求職を行う側が有給休暇やフレックスタイムを活用して時間を作る必要があります。会社は、業務上で余程の支障が出ない限り有給取得などの申請を拒否することはできませんので、計画的に休みを取り、面接の日程を設定しましょう。

有給消化

残っている有給は労働者側に消化する権利がありますので、有給消化は当然申請可能です。ただし、退職する時期によって日数計算が変動しますので注意が必要です。暦年で見て6月30日までの退職か、それ以降の退職かで計算方法が分かれます。

ケース1:退職が6月30日付(暦年で数えて半年以内)

  •  5月31日が勤務最終日
  •  残っている有給20日間

有給残り20日÷12ヵ月×5ヵ月=8,33日
小数点第一位以下は四捨五入されますので、この例だと8日間の有給が取得可能です。もし計算の解が8,5日以上であれば9日間の有給が取得可能ということになります。

ケース2:退職が7月1日以降(暦年で数えて半年以降)
退職日が暦年で半年以降の場合は、残っている有給は全て消化可能です。つまり20日残っていれば20日、30日残っていれば30日取得できます。

転職に伴い発生する契約変更等

健康保険

健康保険に関して、労働者側は基本的に何もする必要はありません。新しい雇用先が健康保険に直接連絡し、支払い調整を行います。次の仕事が始まるまで一ヵ月空く場合も、法定健康保険(Gesetzliche Krankenkasse)に加入していれば一ヵ月間は無償で保険が有効となります。この一ヵ月間は通常時と全く同じ条件が適用されます。家族がいる方はその家族にも同じように適用されます。

ケース1:3月31日で退職し、5月1日から次の会社で仕事開始
この場合4月の一ヵ月間は支払い不要で保険が適用されます。

ケース2:3月31日で退職し、5月15日から次の会社で仕事開始
この場合、昔は放っておくと保険未加入の状態となっていましたが、2013年から自動で更新され、最低負担額での保険加入状態が続くことになりました。通常は保険組合から手紙が届きますが、自身で健康保険組合に連絡し、契約内容を確認及び調整するのがよいでしょう。

年金保険

こちらも、労働者側には基本的に特別な手続きや処理は必要ありません。転職先の会社が更新手続きをしてくれます。次の会社への就職までに一ヵ月以上空く場合も、その期間が未払いとなるだけです。

介護保険

こちらは健康保険と一体となっています。法定健康保険組合に加入していれば、自動で介護保険の支払いも義務付けられます。別で介護保険の手続きを行う必要はなく、法定健康保険に連絡し契約を調整していれば、一般的には介護保険に関して触れる必要はありません。