ドイツ人、ドイツ企業のイメージを日本人に尋ねると、真面目、実直、固い、といった回答が返ってきます。実際に、ドイツの規律は日本よりも厳格なものが多く、契約書社会であることから「白黒はっきり」としています。

かといって、オフィスでは一日中仕事だけをしているのか、と言われるとそうでもなく、多少の気晴らし、息抜きが許される環境でもあり、ドイツ企業に入社した者は驚かされます。

今回は、前回の「仕事風景」に関するコラムの続編として、日中業務と残業についてまとめていきたいと思います。

ドイツの企業と日中業務

ドイツ企業における毎週の業務時間の平均は「38.1時間」と言われており、月~金まで一日辺り毎日8時間近く仕事をすることが通常です。ただし、この「38.1時間」にはお昼休みの時間は含まれていないため、例えば8時に業務を開始すると、朝8時+8時間+お昼休み1時間で、17時まで仕事をすれば一日8時間の労働時間と見なされます(参照:Spiegel)。

この業務の内訳は業種、職種に応じ、Data Managementや経理部のように一日中パソコンにくっついているような部署から、社外からの電話対応に追われるカスタマーサービス部、営業のようにオフィスにいることがほとんどない部署など、それぞれによって時間の使い分けが異なります。

日本人の仕事が非効率なのは、業務中に業務と関係のないことをする(ネットサーフィング等)ことがあるから、とも言われていますが、かといってドイツ人は一日中仕事だけしているのか、と言われるとそういうわけでもなく、同僚とのおしゃべりをしたり、タバコを吸ったり、昼休み中に床屋に行ったりと、割と適当な部分も人によっては少なくありません。

転職ペンギン

ドイツ人のイメージってとにかく真面目で、仕事中にプライベートの話とかしてたら鬼のような形相で睨まれそうなイメージだけど・・?

フェリ

もちろん企業にもよるけれども、基本的にはそこまでガチガチのところは少ないわね。業務に支障のない程度のお喋り(quatschen)は黙認されることが多いし、特に外で牛が鳴いているような田舎の中小企業などでは時間の進み方がスローで、1分や2分にこだわる人はいない印象ね。

お昼休憩

一般的には1時間程度がお昼休憩と見なされ、社内に手作りの弁当を持ってくるもの、自宅に食べに帰るもの、同僚と近くのレストランに食べに行く者、などその楽しみ方は千差万別です。企業規模によっては社内に社食が内蔵されており、安く食事を済ませることもできます。

ドイツの典型的な食事一例

部署や会社によってはタイムカードなどの定めが無いため、厳格に1分、2分をカウントしてこれを超過したからといって咎められることは少ないでしょう。また、フレキシブルな労働基準を設けている会社では、ランチの時間をずらしたり、あるいはランチの時間を削ってその分早めに帰宅する、という社員の姿もちらほら見られます。

転職ペンギン

自分の中の、とにかく時間に厳格なドイツ人のイメージが崩れそう・・

フェリ

ドイツ人の根底にあるのは、徹頭徹尾合理化された「結果主義」ね。要するに、結果さえ出ていれば多少時間にルーズでも許されるし、結果が出ていない人間は時間は結果が出るまで働くべき、といった感じかも。そこは「見せ方」にこだわる日本人との違いとも言えるわね。

残業

ドイツ企業と言えば、残業を行わない、ワークライフバランスに優れた国のように謳われていますが、実際のところ、医療、銀行、コンサルなどの業種では残業が常態化しており、逆に製造業などでは残業が少ない傾向にあり、ドイツ社会全体で週10時間を超える残業をする人の割合は20%程度と言われています。

Welt紙によると、2014年度の統計でドイツ人のおよそ3割が「残業手当のない残業」を、2割が「残業手当のつく残業」を常習的におこなっており、特にコンサル業などでは残業問題が顕著だという報告がなされています(参照:Welt)。

こうした残業の常態化と残業代の未払いは、ドイツ社会でも度々問題として取り上げられていて、ワークライフバランス重視の観点から、給料だけではなく残業の少なさで仕事を選ぶドイツ人の若者の割合も増加しつつあります。

転職ペンギン

ドイツ人で残業をする人はいないって聞いたけど・・?

フェリ

これも日本人がよくおかす勘違いだけれども、実際にはドイツ人の中にも残業をする人はたくさんいるし、休日返上などもありえるわ。ただ、傾向として日本人よりも少なく、かつ特定の業種や業界に偏っている印象ね。ドイツの残業文化に関しては「なぜ労働天国のはずのドイツでサビ残が行われているのか?」の記事を参照してね。

アフターワーク、従業員との交流

日本の企業と異なり、ドイツ企業内ではあまり社員との、社外での交流はありません。そのため、仕事が終われば基本的に一人で帰り、同僚と連れ立って居酒屋(Kneipe)へ行くという光景はほとんど見かけません。

こうした「公私を混同しない」「仕事とプライベートを分かつ」というやり方はドイツと日本の企業を比べたときに最も顕著な違いの一つであり、ドイツ企業で働く日本人や、日本企業で働くドイツ人が度々困惑する部分でもあります(ドイツの駐在員生活: 公私をわきまえた正しいドイツ人社員とのコミュニケーションとは?)。

一方で、社内の繋がりが全くないかというとそうでもなく、例えばクリスマス、夏季の時期には、社内の懇親会のようなイベントが開かれることも少なくありません。こうした場合、家族などもその場に呼ばれることが多いのがドイツ社会の興味深い特徴と言えるでしょう。

また、日本と同様に、社内恋愛を楽しむドイツ人も一定割合存在しており、実際のところ半数以上のドイツ人が、「社内恋愛を肯定的にとらえている」というデータがあります(Photaq)。

このように、日本においては堅いイメージの付きまとうドイツ人の仕事風景ですが、実際にはオフィスでおしゃべりを楽しんだり、社内恋愛をおこなったり、懇親会を開いたりと、ただの仕事一辺倒だけではない環境でもあります。

規律がありそれを守る文化もあるものの、100%それに追従しなくてはいけない、というわけでもなく、多少の遊び心の許される文化であることを知ると、ドイツ人に対する価値観が変わってくるかも知れません。

転職ペンギン

どこまで「はめ」を外していいかの線引きが難しそうだね・・

フェリ

社風によることもあるし、周囲のドイツ人の行動を見て学んでいくしかないわね。ちなみに、ドイツにある日系企業ではある程度日本的な文化が踏襲されるので、ドイツ人の文化が難しすぎる、という人にはおススメよ。求人の詳細はこちらを確認してね