ドイツ市場新規参入:絶対に採用したい現地人材とそのスキルは?

2021-03-15 | タグ:

新規市場拡大の職務は、ドイツでは、英語のBusiness Developmentの呼称をもって扱われています。リンク先の記事を参照すれば分かる通り、Business Developmentの職務には、営業、データ分析、貿易実務、財務管理など、高度な商学知識が要されるため、平均的な給与値もその分68,000~78,000EURと高く設定されています。

但し、市場開拓の際に望まれる能力はまちまちで、本社の社員が経営機能を担う場合、現地で採用される人材に必要とされる経営、財務の能力は軽減されますし、プロジェクトリーダーとして一から十までを担わせる場合、経営、財務、営業の経営者目線での現法の運営が必要となってきます。こうした、商学の知識をフル装備した人材の採用は高くつくため、ドイツの企業の中には、Berufseinsteiger(新卒採用者)でバイタリティのあるものを採用し、時間をかけてこうしたことが行えるように教育するケースも少なくありません。

今回の記事では特に、ドイツ市場を一から開拓して収益化するためには、現地でどのようなスキルを持つ人材を確保したらよいのかについてまとめていきたいと思います。

市場分析スキル(Market Research)

もちろん、どのようなサービス・財を扱うのかによって異なってきますが、基本的にまっさらな市場に新規参入する場合、そのマーケットに対する市場分析を行う必要があります。①そもそも、ドイツにおいて自社製品を輸出したり、サービスを展開してもよいのか、②仮に販売ができたとしても、競合他社と比肩して優位な立ち位置にあるのか、③市場の規模と、自社製品が勝ちうるボリュームはどれくらいと見込まれるか、④どのような販売形式が適しているのか、等です。

具体的に箇条書きすると、マーケットに対する以下の知識が市場分析の際に必要となってきます。

  • 輸出・法規制
  • 競合他社の価格帯、質の研究
  • 市場の規模
  • 販売経路の構造

これらはドイツ市場参入前に自社社員の手で行うことも可能ですが、ドイツ市場の市場分析に際しては、ドイツ人社員に任せることが適しているケースが多々あります。そのため、新規市場での成功を企図する場合、こうした市場分析スキルを携えた人材を囲い込んでおく必要があります。

こうした市場分析は、統計解析を用いられれば最適ではありますが、実際のところそこまで情報の母数が揃わないケースの方が殆どであり、理数的な知識というよりも、実践的に正確な数字を図書館やインターネット上から探し当てる能力のほうが必要とされます。それゆえ、大学や大学院で具体的にデータ解析の知識を得ている必要性は必ずしもなく、社会通念上として妥当なソースの探し方などを理解していれば十分でしょう。

営業スキル(Vertrieb, Sales)

市場開拓は、机上の空論だけでは先へ進展しません。いくらマーケットに対する知識を得たところで、実際に取引をし、収益を生み出す仕組みを生み出せないことには、そのマーケットの開拓は成功とは呼べないでしょう。

Business Developmentに対して求められる二つ目のスキルは、正確なマーケットの分析を行いつつ、かつ候補となる顧客を自力で探してこれる営業力のある人材、ということになります。一般的に、ドイツ社会では「営業」という職に対して特殊な大学の学部を卒業している必要はありませんが、そのマーケットに対する知識がある人材を得ることがマーケット開拓の早道と言えます。

例えば機械工学系の会社であれば、営業職であってもエンジニアリングの知識を持った理系の人材を確保することもありますし、食品系であれば農学知識を持った人材、といった形です。ただし、特殊な分野になればなるほど、その分野における営業力をもった人員を確保することは難しいため、応募の際には門戸を広げ、その道の知識が無くても営業一般に適性のありそうな人材を見定めて採用することが一般的になっています。

具体的には、以下のような営業力がある候補者であればマーケット開拓の進展が早いでしょう。

  • 新規顧客へのアプローチをいとわない(飛び込みも含む)
  • 新規顧客を一網打尽にする人脈を持っている(商工会、大学、等)
  • 以前の職場での顧客層や人脈が活かせる

経営スキル(Management)

見落とされがちですが、データ分析や営業力よりも、現地のBusiness Developmentを担う人材とは、ことさら経営の知識やセンスが問わるポジションとも言えます。すでに確固たる商流が確立されたビジネスであればともかく、そうでないのであれば、会社はそもそも販売価格やマージン、現地の人件費、オフィス料など、あらゆるコストを視野に入れた「計算」を行う必要があるからです。本来であれば、こうした計算は一営業が行うものではありませんが、ことまっさらな市場を開拓するに至っては、Business Developerはそうした分野の数字も握っておく必要があるのです。

この、俗にいう「経営者目線を持った」人材の採用は、Business Developerを探すうえで不可欠である一方、企業が困難を覚えるところでもあります。なぜかというと、支店経営などの経験のある人材は給与が高くつき、場合によっては1000万円以上求められることも少なくないからです。

Management(経営)の知識は、ドイツではBWL(商学部の一種)の範疇であり、こうした学科を卒業した現地人材がBusiness Developerとして採用されやすい傾向にあります。ただし注意しなくてはいけないのは、BWLの中にも専攻が複数存在し、人によってはマーケティング畑、人によっては人事畑、と必ずしも経営の本筋とはかかわりのない分野であるケースも出てくるため、応募者の卒業証明書と合わせて成績表を取り寄せ、具体的にどのような学問を習熟したのかを見極めなくてはいけません。

これら「データ分析」「営業」「マネジメント」の3つのスキルを兼ね備えた人材が、ドイツ市場を一から開拓する上で最適な人材と呼べます。こうした条件を満たす人材は、日系企業の就職市場にはなかなか流れてこず、ドイツ企業に囲い込まれてしまうことがほとんどです。そのためドイツの大学や就職市場と密接な関係を築いたリクルーターからの斡旋が、特に意味を成すポジションと言われています。

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