会社での退職が決まると、後任への引き継ぎや書類の整理、場合によっては引っ越しやお役所手続きなど、身辺整理が急に慌ただしく、時間があっという間に過ぎていくものです。そのような忙しい時期にあっても、同僚や上司などお世話になった人への感謝の気持ちを忘れてはいけないのはドイツも同じで、実は明文化されていない独自の退職文化が存在しています。

今回は、ドイツで会社を退職する際に忘れてはいけない会社から求められる手続き関連、書類、そして気持ちの良い別れをするためにすべきこと、などについてまとめていきたいと思います。

書類関係の取得

まず、退職が決まってから退職日までに会社側から受け取っておく、あるいは少なくとも依頼しておく必要のある書類について見ていきましょう。これらはドイツの法律でも雇用主側に発行義務のあるもので、今後のキャリアや失業手当の受給にも密接に関わる重要なものとなってきます。

Arbeitszeugnis(勤続証明書)

ドイツでの転職を語るうえで欠かせないのがこの「Arbeitszeugnis」、日本語では勤続証明書、勤務証明書などとして知られる文書です。日本の就職文化では出回ることが少ないためイメージがつきにくいですが、ドイツの転職の際には頻繁に提出が必要とされる、前職の実績や勤続年数を証明するために絶対不可欠な書類になります。

それだけ重要な書類のため、ドイツの法律(商法109条)でも雇用主は必ずこの勤続証明書を従業員に対し発行しなくてはいけないと義務づけられています。もっとも、勤続証明書をどのようなフォーマットを用いて作成するかは会社側に委ねられており(必要最低限、記載しなくてはいけない情報は法律で定められているものの)、記載言語なども基本的には発行のしやすいドイツ語形式が多いでしょう。

一般的には出社最終日までに会社が用意してくれるものの、場合によっては発行されるのが退職後になることもあります。また、自身の役職や仕事の役割などを見返して、間違いがないかチェックしておきましょう。

転職ペンギン

日本ではこういうの無いよね。日本からドイツに転職するとき、見せろっていわれたらどうすればよいのだろうか・・

フェリ

その辺の事情は斟酌してくれるわね。業務内容はともかく、勤続年数などはちゃんとわかるものが欲しいと言われることもあるので、源泉徴収票などを英訳して頑張って勤続年数を証明した、みたいな話も聞くわ

Arbeitsbescheinigung

前述のArbeitszeugnis(勤続証明書)とは少し違った毛並みを持つのがArbeitsbescheinigungで、日本語では雇用証明書などと訳されます。ドイツの法律(商法312条)で雇用主による発行が義務付けられている、勤続の詳細を証明する書類という点はArbeitszeugnis(勤続証明書)と似ていますが、前者が転職の際に応募先の会社などに見せる目的で使用するのと異なり、Arbeitsbescheinigungは労働局に提出し失業手当を貰う目的において使用されます。

この書類をもって失業手当の受給資格を満たすかどうかの判断が下される重要な書類であり、労働局側には提出の期限も設けられているため、早めに手にしておきたい書類の一つでしょう。

会社の備品関係の手続き

会社によって違いはありますが、備品担当の総務などとチェックリストを元に「備品返品のチェック」をおこなうことが通例です。会社によって返品内容は異なりますし、場合によっては「パソコンはデジタル部、その他備品は総務部」といったように返品手順が異なるケースもありますが、基本的には以下のような備品を返品することが多いでしょう。

  • パソコン
  • パソコンの充電器
  • マウスや付属カメラなど
  • 携帯電話
  • 携帯電話のパスワード類
  • クレジットカード類
  • 文具等備品
  • 会社のカギ等

退職者面接(Abschlussgespräch)の実施

英語ではExit-Interview、日本語では退職者面接とも呼ばれることのある、すでに退職の決まったものと上職との間で行われる面談のことです。強制解雇や病欠などによらない、通常の退職事由であれば、退職者面接は終始にこやかに、穏やかなムードで行なわれることが常でしょう。

退職者面接はそもそも社交的な意味合いが強く、「今までありがとう」と「これからも頑張ってね」を面と向かってお互いに言い交す最後の場として用いられます。付け加えて言うならば、雇用主と被雇用者という立場を離れお互いに中立的な立場でフィードバックできる最初で最後の場としても知られており、退職に至った理由、職場への不満を堂々とぶつけたり、逆に雇用主側から見た自分の長所や短所について包み隠さず知ることができます。

上述の通り、あくまで社交辞令的に行なわれる側面が強く、実施義務が法律などで定められたものではないため、会社によってはスキップするところもありますし、雇用者側も出席を拒否することが可能です。

転職ペンギン

日本だと退職が決まるとどうしても雰囲気悪くなってしまう印象があるけど

フェリ

その辺の気持ちの切り替えはさすがドイツね。後味の悪くならないよう、退職者面談では恨みっこなしでお互いのフィードバックをしあって問題ないわ

社内外へのお別れ

出社最終日の前に、最後のイベントとして社内外のお世話になった人々へのお別れが残されています。特に社内の同僚へのお別れメールは形式的なものではありますが、門出を祝うドイツの会社文化で最も重要なイベントの一つです。気持ちの良い一歩を踏み出すために、一般的な手段を確認しておきましょう。

社外へのお別れの連絡

社外の顧客にどのような伝え方をするかは、完全にその勤め先のルールや考え方によって異なるでしょう。オフィシャルに退職を伝えるにはセンシティブなルールを適用している会社もあれば、電話での連絡を好むやり方もあったりまちまちのため、一般的には「直属の上職」との相談でこの辺の取り決めを行うのが吉でしょう。

  • これまでの謝意
  • 最終出社日(最後に連絡のつく日)
  • 後任の連絡先

このような情報は最低限「お別れメール」に載せておく必要があり、場合によっては後任の紹介なども行われておくべきです。

社内へのお別れの連絡

社外用と比較すると多少の「遊び心」の許されるのが社内向けのお別れメールです。最終日に送っても良いですし、最終日の数日前に送って「数日後に会社を辞めるので、最後にカフェでも行きましょう」的なお誘いを社内の皆に送るような小技も許されます。

仕事上の義務ではないので、当然送らないという選択肢もありますが、ドイツの仕事文化のフィナーレを飾るせっかくの機会なので、自身の新たなキャリアと同僚へのねぎらいとして送っておくことが好まれます。

内容としては「お別れすることになった旨」「ポジティブな感想」「ささやかなプレゼント」などを盛り込むことが多いですが、この辺は完全に自由作文でしょう。自分の最終出社日とフリーな時間帯を記載しておけば、最後に同僚がお別れの挨拶に来てくれます。また、会社を辞めても繋がっておきたい同僚などにはLinkedInやFacebookの個人アカウントを伝えてなどもごくごく自然に行なわれます。

転職ペンギン

うーん、会社を辞めるわけだし、もう顔をあわせることもないんだから何も言わずに去ってしまっても良い気がするけど・・

フェリ

日本人のドイツ内での転職活動を難しくさせる5つの退職事由」の記事でも書いているけど、やはりギスギスした形で退職してしまうと後々のキャリアに影響してくるわね。立つ鳥跡を濁さず、同僚や上司には気持ちよく門出を祝ってもらいましょう