日本でもコロナの影響で、大手企業の拠点変えや、リモート労働者の地方移住が取り沙汰されるようになりました。代表的なところでは、淡路島に本拠を移転したパソナや、富士山麓に移転したアミューズ社などでしょうか。帝国データバンクの調べによると、2021年の首都圏からの県外移転は過去最高水準の300社に達しようとしています。

地価や物価が安く、満員電車による過密な通勤電車からも解放されるとあって、田舎暮らしに憧れを抱く人は後を絶ちません。こうした「田舎暮らし」が人の心を惹くのはドイツでも同じです。

ドイツ田舎暮らし

田舎-Land、都市部-Stadtとドイツ語で表されますが、その人口規模などに具体的な数値が設けられているわけではありません。新聞などでは簡易化するために「人口10万人以下、以上」で分けることもありますし、この基準が5万人以上、以下であることもあります。

人口以外にも、人口密度など指標となりえる数値はいろいろありますが、日本人の目から見ると、ドイツの人口5万人を下回るような都市は一概に「田舎」と呼んでしまっても過言ではないかもしれません。5万人を境に、交通インフラやデパートの有無等、都市部と比べた際に顕著な違いがみられるからです。

こうした郊外に住む人たちが隔絶された生活を送っているのかというと、そういうわけではありません。高速道路で都市間が結びつけられたドイツにあっては都市間の移動は容易で、車などで1時間かけて郊外から都市部に通勤するようなケースも多く、我々が思い浮かべるような「丸太小屋に住んで、羊を放牧する」ような中世的な田舎暮らしを営むような人口は、本当に少数派でしょう。

ドイツの田舎暮らしのメリット

都会の喧騒に疲れた社会人の憧れの的である、ドイツの田舎の牧歌的な生活。我々日本人がその生活を享受するのであれば、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

生活費が安い

Frankfurter Allgemeine紙の調べによると、一家族丸々の生活費を勘案すると、都市部に比べ田舎部のほうが一ヶ月約650EUR程度安い金額で同じような生活水準を享受できる、とされています。

大きく違うポイントは家賃で、90㎡の家を借りる場合、田舎部と都市部では月平均で1000€もの違いが生まれてきます。大家族の場合など、特にこうした家賃面でのメリットは重要なポイントになるのではないでしょうか。

対して、田舎部に住む場合は車での移動が必須となり、必然的に車・ガソリン代が必要となります。この車・ガソリン代の面で田舎暮らしは都市部よりも出費がかかりますが、先ほどの家賃と相殺してもまだ十分安上がりです。

治安が良い

勿論、都市によって事情は異なりますが、基本的に田舎部の治安は都市部よりも良いとされています(例外的に、ミュンヘンなどは治安が良い)。特に、フランクフルトやベルリンなどでは、高所得者層・旅行者を狙った詐欺やスリ、移民の犯罪グループによる犯罪が横行しています。

良くも悪くも旧態依然とした田舎部では、住民の顔を皆が知っているような文化で、こうした都市部特有の犯罪は発生しづらい傾向にあります。

ただし、都市部に比べ夜道は暗くなるのが早かったり、民家のないような道などもあることから、こうした過疎部に住むような場合は誘拐や暴行などに気を付ける必要はあります。

空気がきれい、緑豊か

NDR社の以下のサイトからは、ドイツの各都市の大気汚染の度合いを調べることができます。ニーダーザクセン州であれば、以下の通り大都市であるハンブルグやハノーファーの汚染が多く、逆に田舎部は緑の丸印であらわされるように空気が澄んでいることが分かります。

Quelle: Das Ergebnis der großen Luftmessaktion

緑の多さでも、やはり田舎部にいけば羊やヤギが放牧されていたり、すぐ近くに山や森があるなど、都市部に比べすぐに緑に触れられるような環境が整っています。こうした緑に近い生活に憧れ、家族連れで田舎に移住するドイツ人も少なくありません。

ドイツの田舎暮らしのデメリット

上記のように、一見すると良いことばかりのように思えるドイツの田舎暮らしですが、もちろんデメリットと呼べるような部分も多く存在します。

仕事が見つけにくい

日本人にとってドイツ田舎暮らしの障壁となるのが、仕事の見つけにくさです。基本的に、日系企業の多い大都市(デュッセルドルフやフランクフルト等)や日系企業と繋がりの多いドイツ企業が目立つミュンヘンなどでは仕事のあてもあるのですが、田舎にくるとこうした大企業とは無縁で、多くの日本人が仕事探しに苦労します。

デュッセルドルフは歴史的に「日系企業のお膝元」であることから、日本人にとって欧州内でも仕事の見つけやすさは群を抜いており、職探しとなると応募・面接までの流れが最もスムーズに終始します。
出典:ドイツ就職で日本人におススメの都市ベスト5

フリーランスのように自立した収入があったり、配偶者の仕事の関係などで田舎に伝手がある場合などは別として、一から田舎に住んでその土地で仕事を見つけるというのは,

日本人にとって難易度が高いでしょう。

MDR社の調べによると、人口10万人以上の都市(都市部)と以下の都市(田舎)では、平均的な賃金水準には20%程度の差異が存在します。将来のステップアップにも結び付かないなどの理由から、キャリア路線を目指すのであれば田舎暮らしは選択肢から排除する人も少なくありません。

田舎に住んで都市部に通勤という方法もありますが、その場合片道1時間程度は通勤に要することを覚悟しなくてはいけません。

アパートが見つけにくい

学生や社会人など、人口の流れが顕著な都市部と比べ、田舎部は人の流れが滞っており、アパートの空きも中々見つけづらい傾向にあります。インターネットなどで入居者を募集するようなことも少なく、人づてに友達に紹介してもらったり、フィーを払って仲介業を雇ったりと、工夫を凝らさないと家探しに成功しないでしょう。

家主の性格も都市部と比較すると保守的で、外国人である我々を受け入れてくれづらい傾向にあります。

ビザの手続きなどが面倒

ドイツにある在独日本領事館は全て都市部(ベルリン、フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ハンブルグ)に集中しており、パスポートの延長や免許証の交付など、日本人に必要なお役所手続きの多くはこうした大都市に行かないと処理することができません。

加えて、人口5万人以下の小さな都市では、外人局も日本人のビザ手続きに慣れていないことが多く、都市部での申請に比べて無駄に時間をかけたり、いらないはずの書類を要求されたりと、困難を覚える場面が少なくないでしょう。

文化的な問題

日本と同じで、基本的に都市部であればあるほど住民は外国人慣れしており、田舎部であればあるほど保守的で、よそ者を拒む傾向にあります。特に、小さな田舎では「生まれて初めて日本人と会う」といったような高齢者層も少なくなく、良くも悪くも注目の的となります。

これが旅行であればともかく、長期的にその土地に住むのであれば、様々なストレスの種となります。ご近所づきあい、理解の難しい方言、いわれのない差別や偏見など、特に友人のいないような状況であれば精神を病むようなケースも多く存在します。

店がすぐ閉まる

Focus紙はドイツの田舎暮らしの短所として「ナイトライフ」「アクティビティ」が乏しいことを挙げます。特に、人口5万人を下回るような田舎町では、レストランや居酒屋の数も限られており、基本的には地元の人たちで席が埋め尽くされてしまいます。若者たちにとって交流の場となるクラブや地元のコミュニティの数も少なく、新しい友達を作るのに難儀するでしょう。

ナイトライフに限らず、スーパーや薬局など生活必需品を購入するような場所の選択肢も限られており、20時以降、日曜日など困ったときに手が届くようなコンビニが中々ありません。

どんな人にドイツの田舎暮らしが向いているか

さて、ドイツの田舎暮らしの長所・短所を今回見てきました。日本同様、結局どちらの生活でも良い点、悪い点というものは存在しており、一概に「田舎暮らしは最高」とはならないでしょう。

一般的に、小さな子供を持つ家族などにとっては緑豊かで安全な田舎暮らしが、独身者や若者にとっては刺激の多い都市部暮らしが、魅力的だと言われています。

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治安
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交通の利便性

特にドイツに移住する日本人にとっては、上述の通り仕事探し、文化的な問題、お役所仕事など、ドイツ人以上に障壁が多く、田舎暮らしは簡単とは言えません。魅力を感じるような都市や田舎町があれば、1ヶ月~2ヶ月スパンで長期滞在し、その土地の水に自身が適するのかを確認してからでも、本格的な移住は遅くはないのではないでしょうか。